右肩下がりの時代で
いま何が起こっているか

 日本はいま右肩下がりの局面に入りつつある。2006年以降、すでに人口の減少が始まった。退職金を受け取った世代のシルバー消費や、消費税引き上げ前の駆け込み需要でしばらくは景気が底上げされるかもしれないが、早晩市場の縮小は目を覆いようもなくなっていくだろう。

 韓国や台湾の企業が台頭し、かつて世界を席巻した日本の電機メーカーは巨額の赤字を計上するに至っている。台湾を単なるアジアの途上国と考えてはいけない。彼の国はもはやシリコンバレーの一部と考えた方がいい。ガラパゴス化して国内に閉じこもることで生き残ろうとした携帯電話も、iPhoneという外来種の侵入で勢力図が変わりつつある。

 その一方で、日本企業の国外脱出も加速していく。洪水後のタイでは、日本企業がかつてよりも生産量を拡大している。円高や電力料金値上げ、雇用の硬直性などの重荷に比べれば、洪水のリスクの方がまだマシということなのだろう。我々は戦後、こうした局面を経験したことがない。

 それでも海外や新規事業において成長の芽を見出せた企業はいいが、そうでなければ大変だ。経営者は売上が減っていく中で利益を確保するため、大幅に固定費を下げる必要に迫られる。もはや採用抑制などでは追いつかなくなっていく。何年かに一度、工場の閉鎖や人員削減に踏み切りながら、国内の事業規模を段階的に縮小していくことになるだろう。高度成長期にやってきたことの逆をやることになる。

 また、社員の側から見ると、市場が縮小していく中で組織の成長は止まり、キャリアアップのチャンスが失われることになる。例えていえば、高速道路の料金所の手前で渋滞が発生しているようなものだ。速い車も遅い車も一様に減速しながらやがて動かなくなる。こうした状況は組織の中に、不公平感や被害者意識を生み出し、規律を大きく損なうことにつながる。