「あなたの会社は自社のことを数字でアピールできますか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与さが開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。
「年収1000万円」には翻訳不要の魅力がある
企業イメージを強くするために「自社がどう見えるか」を設計することは何より大切だ。本書でもそのやり方を数多く伝えている。
しかし一方で、この翻訳作業をほとんど必要とせずに、企業イメージを訴求できる道具がある。それは「数字」である。金額で換算できるものは、基準が明確でわかりやすい。グローバルな企業とも比較が容易である。
たとえば、高年収・高報酬・売上規模が大きいことは、大半の求職者にとって非常に魅力的に映るからだ。よく使われる手法としては「20代で年収1000万円」「平均年収1000万円」といった表現がある。これらには翻訳不要の魅力がある。
エムスリーはGAFAMに、いかにして並んだか
年収や報酬だけが数字ではない。
実際に私が直接携わったケースに、エムスリーの企業イメージ構築がある。エムスリーは国内投資に関わる人であれば、知らない人はいないといえるほど知名度が高い企業だ。
一方で、新卒学生からの認知率に関しては課題があった。そのため、IR上の魅力をいかにHR観点でわかりやすく表現するかが重要だった。
具体的には以下のような数字を訴求した。他施策の効果もあり、2020年公開の東大京大就職ランキングでは、IT部門で2位になった。日本マイクロソフト、アマゾンジャパン、楽天、DeNAなどの超競合を軒並み抜き去り2位。同ランキングの1位はGoogle(現アルファベット)だったため、まさにGAFAM陣と肩を並べる結果になった。
〈採用候補者に「覚えてもらう」ための数字〉
・「15年連続」で増収増益
・時価総額「1兆円」
・「350万人」もの医師が登録
・国内外で「17事業」を展開
・製薬会社のMR人件費に「1.5兆円」
(いずれも取材当時の数字)
ここに書いてある数字を見れば、誰もが問答無用でエムスリーが「エクセレントカンパニー」だと認めるはずだ。数字は、短く、的確にその会社のイメージを決定する効果がある。