「あなたの会社は10年前と同じ採用活動をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さんだ。
「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与差が開いている」……こうした、多くの採用担当者、経営者たちから寄せられる悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』である。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を鮮やかに構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊だ。
この記事では、本書の内容を元にしながら「採用活動を成功させるためにやるべきこと、やってはいけないこと」を北野さんに語ってもらった。(構成/ダイヤモンド社・田中怜子)
採用活動で最も大事なのは「絶対的なNG」を回避すること
採用活動は究極的には「人の気持ち」というとてもデリケートで繊細なものを扱う仕事です。「こうすればOK」という正解はありません。
だからこそ長い間、「場当たり的」で「属人的」なものにとどまってしまっていました。
私自身、採用をしていて日々感じていたのは「なぜこんなにも採用って、再現性が低いのだろう?」という課題感でした。
たとえば、候補者を目の前にして、どうやれば自社に確率高く興味を持ってもらい、最終的に入社してもらいやすいのか? 母集団形成は何にいくらどう投資すればいいのか? 何を強化すれば採用の成果が安定するのか? 説明会では何をどう話すことが正解なのか?
何より、根本的に人が人と働きたいと思う理由は何なのか。それらの答えは、ブラックボックスそのものでした。
今、私は多くの企業の経営者や採用責任者と話す機会がありますが、まさに全員が、以前の私と同じ悩みを抱えています。
相談を受けるたびに私は「絶対的な正解はありません。だけど、データを見れば“これは絶対にNG”という失敗を避けることはできます。そして、どちらかといえばこっちの方がいい、という選択肢を積み上げることで、期待値を積み上げることはできます」とアドバイスしています。
私からすると9割の企業が「絶対にNG」の地雷を踏んで、多くの候補者を逃しているのです。
「絶対に採用してはいけない人」とは? その質問そのものが時代遅れ
「いい人を採用するために、“絶対にNG”の地雷を踏むな」。私がこの話をすると、あるとき、人事の人や経営者からこう聞かれました。
「絶対に採用してはいけない人ってどんな人ですか?」
というものです。
もちろん、私自身の経験から、個別の答えを導き出すことはできます。
「自社のカルチャーにフィットしない人」
「元職場の人から、いい評判も悪い評判も流れてこない人」
「経歴を詐称する人、嘘をつく人」
しかし、ここでお伝えしたい結論は「この質問をしてしまうこと自体が、NG」だということです。
なぜなら「絶対に採用してはいけない人ってどんな人ですか?」という問いからは、企業の側が求職者を「選別する」という考え方が、強く感じられるからです。
10年前であれば「面接は、企業の側が人を選別する場」という考え方は当たり前だったかもしれません。しかし、人口が減少し、若者の価値観が変化した今、こうした上から目線の態度は求職者からは嫌われます。新卒採用のZ世代であれば、なおさらです。
せっかく内定を出した人が、内定を辞退したり、その後辞めてしまったりしたら、採用活動は失敗です。採用した人全員を活かす仕組みをつくる。そのことをぜひ優先して考えてみてください。
(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』を元にした語り下ろしです)。
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO。兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。