「あなたの会社はZ世代に嫌がられるような採用活動をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与さが開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。

【目からウロコ】婚活で結果を出す男と、いい人が採用できる企業の意外な共通点とは?Photo: Adobe Stock

告白と採用活動は似ている

 少しだけ「採用」から話がそれて恐縮だが、私が好きなマンガに『インベスターZ』という作品がある。このマンガの中に採用力を考える上で非常に勉強になるシーンがある。

 美人の隣になぜか、男前とは言いづらい男がいる。二人はバーのような場所でお酒を飲んでいる。男は美女を見つめている。どうやらいい雰囲気のようだ。そしてイラストの横にはコメントとして「美人の隣に座れるのは……美人に告白した男だけだ……」と書かれている。

 つまり、美女と野獣の野獣側になれるのは、恥や失敗を恐れずに告白という行動をとった男だけである。こういう趣旨である。

 これは、実は採用活動のプロセスに非常に似ている。いい人材、絶対に採用したい人材を最終的に採用することができるのは、その人物に対してオファーを出して、しつこく、徹底的に追い続けた採用担当者だけである。言い換えると「いい人材の隣に座れるのは……いい人材に内定を出した人事だけだ……」ということだ。

キーワードは「オンタイム」。タイミングと頻度をおさえよ

 では、どうすればいい人材に内定を出し、入社してもらうことができるのか?

 最も大切なのは「タイミング」と「頻度」だ。とにかく、採用したい人物を追い続け、接触頻度を落とさずに、相手が動くタイミングが来る時期を待つ。私はこの戦略を「オンタイム」と呼んでいる。オンタイム戦略こそが、採用活動において最も王道かつ最強の方法なのである。

 なぜ、「オンタイム」が大事なのか。それは、採用活動のターゲットが「全員、既に見込み客だから」である。

 もう少し詳しく説明しよう。商品やサービスなど他の営業活動(告白を含む)などと採用活動との違いは、前者が「購入の意思決定をする人と、しない人が交じっている」のに対して、後者は「必ず、ほぼ全員がどこかで働くという意思決定をする市場」であるということだ。

 営業であれば、買うかどうかわからない人を口説かなければならないし、告白であっても相手に交際や結婚の意思があるかどうかわからない。

 しかし、採用は違う。参加している候補者が「どこかの企業で働く」ことはほぼ必ず決まっている。

 この考え方は、新卒採用でも中途採用でも同様に当てはまる。
 日本の新卒採用の場合、大多数の人は、大学2年から卒業時までのどこかで就職先を決める。

 中途採用が新卒採用と違うのは、今の会社に居続けるという選択肢があることだ。特に、自社に必要なレベルの人材は基本的に現職に残り続ける選択肢を持っているケースが多い。しかし、裏を返せば、365日いつでも「転職する機会がある」ともいえる。中途採用でも重要なのは、そういう人材が転職したくなったタイミングをおさえる=オンタイムであることなのだ。商売であれば、絶対に逃してはいけない機会だ。

オンタイム戦略は、知名度のない会社の武器

 求職者が「どこかの企業に必ず就職する」と決まっているからこそ、採用する側は、とにかく追い続けて、接触頻度を落とさずに、相手が決めるタイミングが来るのを待つ。つまり「オンタイム」であることが、結果を出すための一番の秘訣なのである。

 そして、これは知名度のない企業にとっても、「勝つための最大の戦法」といえる。恋愛・婚活マーケットでいうと、確かに、外見がいい人物(=有名人気企業)は、たくさんの声がかかる確率が高いかもしれない。あなたの競合は多いかもしれない。

 しかし、その多くは、相手の表面的な部分を見ての求愛である。その中で、もしあなたが相手を追い続けてタイミングを待ち続ければ、その行為自体は必ず相手の記憶に残る。他とは違う存在になれる可能性はある。そしてそれは、誰でも凡事徹底できる差別化要素になりえるのだ。