「採用する相手のことを、ちゃんと理解していますか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与さが開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。

【9割が知らない】採用に強い会社の人が、内定者に「同じゼミの人を紹介して」と頼む理由とは?Photo: Adobe Stock

ターゲットを属性で分類する

 採用マーケティング上のセグメンテーションは、属性で切った集団を指している。たとえば、新卒採用の場合、「エリア」「大学・大学カテゴリー」「理系文系」などだ。エリアであれば、関東なのか、関西なのか、どの地域までターゲットとするのかを選ぶ。

 中途採用の場合は「エリア」「年代」「年収」「業界」「職種」「企業規模」「卒業大学・大学カテゴリー」「資格」などを指す。新卒と同様に、関東なのか、関西なのか、全国なのか。年代は20代・30代・40代・50代・60代のどこからどこまでが範囲なのか。業界や職種に指定はあるのか。所属する企業規模(社員数名~数万名)に絞りはあるのか、などを指す。業種によっては卒業大学や資格の制限も含まれる。

 セグメンテーションは、あくまで仮説でいいが、絶対に言語化する方がいい。理由は、母集団形成はチームでのマーケティング活動になるため、セグメンテーションを決めていない施策はコミュニケーション面での効率が非常に悪い。現実的には、いい人材がいれば幅広く内定を出すこともあるだろうが、共通認識をつくる必要があるからだ。経営陣が「あれも、これも」と求める人物像に対して、現場が「実際はそんな人採れないですよ……」と悩んでいる話はよく聞くが、こうした認識のギャップも、この段階ですり合わせておくべきだ。

ターゲットの解像度を上げる

 ターゲティングをする上でのポイントは、徹底した求職者理解。つまり、ターゲットのことを解像度高く理解することだ。
 求職者を理解するには、
・所属するコミュニティ
・採用スケジュール
・求職者インサイト
この3つを具体的に知ることだ。

 所属するコミュニティとは、求職者が時間を一番使っている団体や集団を指す。
 たとえば、新卒採用の場合「所属するサークル/部活」がコミュニティにあたる。メインとなるターゲットはゼミや研究室には所属しているのか。どういう部活やサークル、アルバイトをしているのか。採用人数が大きくなると、複数ジャンルのコミュニティから採用することになるので、その点も注意が必要だ。
 そして、その求職者がどんなスケジュールで、どこを受けているかを把握するのだ。

 ちなみに中途採用の場合、まずは「年代」が大きな要素になる。

 20代か、30代か、40代以降か、所属する年代は価値観に影響を与えやすい。他にも、企業や業界、地域も特定する。メインとなるターゲット層は、関東か、関西か、九州か、海外か。所属する企業は大企業か、中小企業か。業種は、メーカーか、商社か、IT企業か。幅広く採用したい場合でも、一番メインとなる層を可視化する。職種別に採用する場合は、どういう部門や部署に所属しているのかを指す。

コミュニティが可視化されれば、最適なスケジュールが決まる

 コミュニティを可視化すべき理由は、ほぼ必然的に最適なスケジュールが決まるからである。人の生活スケジュールは、一番時間を使っているコミュニティのルールで決まるのだ。

 新卒採用の場合、都心部エリアの学生か、地方エリアの学生かによって、年間の動き出すスケジュールがおおよそ決まる。一般的には、都市部の学生の方が動き出すのが1ヵ月以上早い。あるいは部活動に取り組んでいる場合、大会などのスケジュールによって就活し始める時期が前後する。サークルやアルバイトも、繁忙期が決まっていることが多いため、繁忙期を外したマーケティングが必要になる。

 中途採用の場合も、スケジュールはある程度読める。キャリアを考えやすい時期には、傾向があるからだ。年末年始や、人事異動が発表されやすい3~4月、9~10月頃は、中途採用に動く人が多い。ボーナス支給時期も同様だ。また、1週間単位で見ても、社会人であれば、月曜日や金曜日は忙しくてレスポンスが悪い。さらに1日単位で見ると、通勤時間や仕事後の方が当然、アクティブ率は高くなる。

採用競合とキャリアの悩みも予測しやすい

 コミュニティを可視化することで、採用競合とキャリアの悩みも予測しやすくなる。キャリアの指向性は、所属するコミュニティに影響を受ける。新卒学生は部活やサークル、研究室やゼミに影響される。具体的には、先輩の就職先や業界を選びやすい傾向が挙げられる。たとえばコンサルティングファームに就職する先輩が多ければ、後輩も同様の傾向が強い。また、地域ごとに保守的(インフラ産業や地銀)か挑戦的(IT企業やグローバル企業)かのばらつきがある。コミュニティを可視化すれば、採用競合を設定しやすくなる。

 これは中途採用でも同じだ。中途採用は所属する業界や職種が採用競合となりやすく、業界や職種ごとにキャリアの悩みも一定のパターンがある。たとえば、大手日系メーカーのルート営業をしている20代の悩みは「自分の市場価値」と「将来のキャリア像」が多い。具体的には「自社の経営は安定しているが、将来が予測できてしまい、今の会社に居続けると選択肢が狭まるのではないか」という不安を持ちやすい。

 コミュニティを可視化することで、採用競合とキャリアの悩みが予測しやすくなるのだ。

(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』を抜粋、編集したものです)。

北野 唯我(きたの ゆいが)
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。