「あなたの会社は採用でクチコミを活用していますか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与さが開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。
クチコミが「母集団形成」の効率を決めるようになった
採用活動には、「今の時代だからこそ、より重要になった部分」と、「時代が移り変わっても、変わらずに重要な部分」が存在している。結論からいうと、前者の時代の変化により大きく変わった部分が、「母集団形成のための採用マーケティング」である。
「母集団形成」とは、採用活動の最初に、自社を受ける候補者を集めること。ある企業が採用活動をするときに避けて通れないものだ。集めた母集団の質や量により採用活動の成果が決まるため、採用プロセスにおいて非常に重要な工程といえる。
企業ブランドや認知率の認知のされ方は、明らかに2010年代に変わった。その理由は言わずもがな、WEBの発展とスマートフォン、SNSの普及である。かつての企業ブランドと認知率は、メディアの露出量にほぼ比例していた。テレビや新聞で露出すればするほど、企業ブランド力も高く、認知率も高かった。つまり、メディアでの露出が多い企業ほど優位に立てていた。就活情報誌に広告を載せるだけで認知効率が上がり、優位に立てるシンプルな構造があった。
ところが、現在は全く違う。
いまや、「母集団形成」はクチコミの影響度が大きく上がった。あなた自身も転職や就職をする際に、その企業がどれぐらいの年収なのか? どういう社風なのか? 働きやすいのか? 成長できるのか? などを、ネットで調べるだろう。
そしてもし、そこに極めてネガティブな情報やハラスメントの情報が大量に溢れていたら、おそらく、入社することを躊躇するだろう。
企業からすると、クチコミデータは無視できないものになったのだ。
クチコミの点数で最大6倍、件数で最大9倍のエントリー数
実際「ONE CAREER」のデータで見てみると図のようになる。
クチコミの点数とエントリー数には、明らかな相関が見える。具体的には、クチコミ点数が5点満点中、3.0未満の場合のエントリー数を1とすると、クチコミ点数が3.0~3.5だと最大4.1倍。クチコミ点数が3.5~4.0になると、最大6.6倍ものエントリー差が生まれている。
またクチコミの「件数」もエントリー数と相関する。クチコミ件数が0の場合のエントリー数を1とすると、クチコミ件数が1~9では最大3.2倍。クチコミ件数が10~29だと最大9.2倍の差が出ている。
実際に企業経営者と話していても、クチコミデータは無視できない存在だと感じているケースは多い。クチコミは企業の評判を左右し、それが採用活動におけるエントリー数に直結する。良いクチコミが多い企業は、求職者からの関心が高まり、エントリー数が増加する。一方、悪いクチコミが多い企業は、応募者数が減少し、人材確保が困難になる。
このように、クチコミは採用活動において重要な役割を果たしており、その管理と対応が企業の成長にとって必要不可欠である。企業はクチコミの内容を把握し、ポジティブなクチコミは採用活動に活かし、ネガティブなクチコミには適切に対応することが求められる。
具体的には次ページの表を参考にしてほしい。
もし自社のクチコミが悪い場合、「体験施策」そのものを改善することになる。一方で、短期的には良いクチコミとネガティブなクチコミで対応を分けることが必要になる。
なお、クチコミ対策でサクラ行為や内容の編集は絶対にNG。必ずバレる時代であることを認識しておこう。
(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』から抜粋・編集したものです)。
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。