「最初は仲が悪かった」「ライバルだった」……映画やドラマで画一的に扱われがちな“女の友情”。しかし現実の女の友情は、もっと繊細な関係のはずなのだ。「女性同士の友情」を多数取材してきた筆者が解き明かす「意外な女性同士」の友情とは。※本稿は、クレア・コーエン著、安齋奈津子訳『女友達ってむずかしい?』(河出書房新社)の一部を抜粋・編集したものです。
映画やテレビドラマで描かれる
陳腐な「女の友情」パターン
俗説:一番親しい関係にある友達は自分と似ている人?
〈敵が最後には親友に〉。
こんなあおり文句の映画やテレビドラマが、どれだけあることか。
ネットメディア〈バズフィード〉のライターのハンナ・マーダーは、2020年に〈こんなのあるわけない。女性同士の友情映画22本〉という一覧をまとめたが、そこにあげられたほとんどが、この手のパターンの作品だった。
〈ライバルがいつしか親友に〉(『ギルモア・ガールズ』)。
〈おたがい毛嫌いしていた……それが、花嫁付添人と子どもたちの名づけ親になる関係に〉(『ワン・トゥリー・ヒル』)。
これぞ、私を腹の底からいらっとさせる、大衆文化で描かれる女性同士の友情というやつだ。あらかじめ用意されたシナリオ。登場人物全員が従わねばならない、ハリウッド式の先読みできるワンパターン展開。現実の世界では、細かなニュアンスが女性同士の友情を築きあげているのに、そうしたものが入り込むすきがどこにもない。
そんな友情「あるわけない」と思ったら?
あるわけない女性同士の友情の世界に、「あるわけない」層をもうひとつ加えればいい。