ロシアがウクライナで行う戦争は、爆撃や銃撃だけでなく、それと並行して経済戦争を活発に展開している。その最前線は、ロシア支配下にあるウクライナの農地だ。ロシアとそのパートナーたちは盗み出した約10億ドル(約1400億円)の穀物を、急拡大する闇市場で売りさばいている。ウクライナに侵攻したロシア軍は2022年以降、欧州屈指の肥沃(ひよく)な農地の一部を占領している。ロシア軍は収穫物を押収したり、(大抵は強制的に)安く買いたたいたりしている。このビジネスには、ロシアの戦時利権システムの恩恵にあずかる幅広い顧客のネットワークが関与している。侵攻の装備を提供するロシアの造船所をはじめ、イラン革命防衛隊(IRGC)の関連企業、シリアやイスラエルと貿易を行うクリミア半島の実業家などだ。別の1社はアラブ首長国連邦(UAE)経由で販売している。