中国経済はバブルから一転、デフレ・マインドの浸透により、わが国が経験した長期低迷の暗闇に足を踏み入れつつある。不況による節約志向の高まりから、「3元(約60円)朝食」を出す地場チェーンの人気が急上昇し、ピザハットやマクドナルドなど外資系も格安メニューを投入せざるを得なくなっている。習近平国家主席の下、政府は金融緩和や景気刺激策を加速させているものの、住宅在庫の処理には「140兆円を上回る資金が必要」と指摘されており、暗いトンネルの出口は見えない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
中国の不況が深刻化…
不動産大手88社が最終赤字!
中国政府は今、次々に景気対策を打たざるを得ない状況に追い込まれている。今春に、「不動産業者の破綻増加は避けられない」と述べた倪虹住宅都市農村建設相は、8月下旬に住宅市場の立て直しに対しての強い意図を明確にした。中国経済の重要なカギを握る、住宅市場の支援拡充に本腰を入れるとみられる。
9月、スペインのサンチェス首相と会談した李強首相は、「電気自動車(EV)は過剰生産というわけではないが、経済分野で協力できる分野は幅広い」と発言した。これは、欧州向け輸出拡大を念頭に置いた発言といえる。
また、9月24日、中国人民銀行の潘功勝総裁は追加の金融緩和の可能性に加え、本土株買い支え資金の拡大など、矢継ぎ早に対策を打つ考えも示した。
これらの発言の背景には、不動産市況の悪化が止まらず、景気の先行きが一段と不透明になっていることがある。1~6月期の中間決算で、不動産大手158社のうち88社の最終損益が赤字だった。中国政府は、金融緩和や地方政府による住宅在庫の買取り策を実施したものの、期待されたほどの効果が出ていない。オフィスなど商業用不動産の市況も悪化している。生産、設備投資などの停滞で、8月、若年層(16~24歳、学生を除く)の失業率は18.8%に上昇した。
それに伴い、中国のリスク資産の下落懸念は高まっている。少子高齢化が進む中で雇用不安が高まると、当面、内需の本格的な拡大は見込めない。現状の経済対策では景気の本格的な回復は難しいだろう。