中国国旗と足場写真はイメージです Photo:PIXTA

中国の不動産価格下落に歯止めがかからない。かつて中国の不動産投資はGDPの約29%に達した。鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの関連需要が増え、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長した。地方政府も潤い、まさに不動産を中心に経済が好循環していた。しかし、今はそれが逆回転している状況だ。政府は国有・国営企業に補助金を出し、低価格のモノを大量生産して景気回復を試みている。が、中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」という。中国にまず必要な政策とは何か。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国の不動産バブル崩壊は
過去30年間で世界最大

 2020年8月、中国政府の不動産開発会社の借り入れ規制(3つのレッドライン)をきっかけに、中国の不動産市場に変調が発生した。そこから4年が経過したが、不動産価格の下落になかなか歯止めがかからない。7月にも新築の住宅価格が下落し、地方政府の財政悪化に対する懸念が高まっている。

 最近、国際通貨基金(IMF)は、「中国の不動産バブル崩壊は、過去30年間で世界最大レベル」と指摘した。中国の大手デベロッパー恒大集団(エバーグランデ・グループ)の粉飾決算問題もあり、今のところ、不動産関連の債務規模の実体すらよく見えない。中国経済の停滞への懸念から、中国から脱出する個人や企業が増えている。

 中国政府の政策も、人々の安心感を取り戻すには至っていない。不動産価格の下落に歯止めがかからないため、家計の節約志向は高まり個人消費は伸び悩み気味だ。また、政府が国有・国営企業の業容拡大を優先する結果、鉄鋼業界などの主要分野で価格下落に拍車がかかっている。

 中長期的に、中国の人口は減少する。民間企業の生産性が向上しないと、中国経済の実力=潜在成長率は低下する。不良債権処理の先送り、国有企業重視の政策方針が変わらないと、不動産市況の悪化は鮮明化しデフレ圧力が高まることも考えられる。