ホープ・ヒックスさんは2019年の事件当時、19歳の見習い船員として米国船籍の自動車運搬船に乗り込み、紅海を航行していた。彼女は上級船員らに繰り返し飲酒を強要された上、彼らの1人に船室まで付いてこられてレイプされたと語る。当時、機関士を目指して訓練中だったヒックスさんは、目覚めるとシーツに血がついており、体にあざがあったという。沿岸警備隊は後に上級機関士の1人が性的暴行を加えたとして起訴した。だが昨年、この機関士が商船船員免許を自主的に返上し、全ての容疑が取り下げられた。世界中の物資を運搬する船での性的暴行を訴えるケースが相次ぎ、海運業界に厳しい目が向けられている。この職業は圧倒的に男性が多く、(性差別や性暴力などを告発する)「#MeToo」運動が盛んだった頃に他業種が採り入れた変化にまだ追いつけていない。ヒックスさんの事件は、職場文化を見直し、それを管理する規則や法律を変えるきっかけになったが、多くの事件が依然として起訴されずに埋もれている。