彼の見る夢は、彼の乗ったハンヴィーが道に埋められた爆弾の上を通った日のことだ。爆発で彼の脚は折れていたが、出血しているふたりの兵士を安全なところまでなんとか引っ張り出したところで、ハンヴィーが炎に包まれた。

米軍の元軍人がトランプに問う「本物の暴力を、知っているのか?」『アメリカの悪夢』(デイヴィッド・フィンケル著、古屋美登里訳、亜紀書房)

 彼が夢に見るのは救い出せなかった運転手のことだ。夢のなかでその運転手はいつも炎に包まれていて、必ずアイアティにこう尋ねる。「どうして俺を助けてくれなかったんだ?」

 気の毒な運転手は19歳だった。そして気の毒なアイアティはなんとしてでもほかの夢を見たいと思っていた。

 ブレントは自分のアパートメントにいて、月曜日になることを心から望んでいた。そうなればまた忙しくなり、こんなことを考えなくてすむようになる。土曜日が嫌いなのは、静けさが押し寄せてくると、いつの間にか兵士たちひとりひとりのことを考えてしまい、その兵士たちが任務から戻ってきたり、話をしようとしたりする姿で現れるからだ。