いつも他人と比べてしまう」「このままでいいのか、と焦る」「いつまでたっても自信が持てない…」。仕事や人生に悩んでしまった時、どう考えればいいのでしょうか。『機嫌のデザイン』の著者であり、数々の名言がTwitterで話題となった、プロダクトデザイナー・秋田道夫氏の「毎日を機嫌よく生きるためのヒント」を紹介します。(初出:2023年4月8日)

気を使う人は損をする。気が利く人は得をする。【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

気を使う人は自分を消耗してしまう

──ある日の秋田さんのTwitterに「気を使う人は損をする。気が利く人は得をする。」という投稿がありました。この意味を詳しく教えてください。

自分を消耗してしまうか、ちゃんと保てるかの違いです。

「気を使う」というのは、人からどう見られているかを気にして神経をすり減らすイメージがあります。

それに対し、「気が利く」というのは先回りして相手を喜ばせるニュアンスがありますね。

なんといいますか、自分から仕掛けて親切を楽しんでいる雰囲気を感じます。

「気を使う」は相手の顔色をうかがいながら、びくびくしてことをなすので、結果として、余計なことまでしてしまうリスクもあるんですね。

まさに親切が仇になるわけです。

「気が利く」の行動は先回りです。相手が気づく前にもう親切が完了しているんです。

「喉が渇いたな」と感じる前にすっと飲み水が出てくる。ドアの前に立ったらドアが勝手に開くような配慮です。

気を使うのは「手動ドア」で、気が利くというのは「自動ドア」みたいなものかもしれませんね。
手動ドアを開け閉めするのはちょっと疲れますよね。

──なぜ疲れるのに「ドアを開け閉め」するのでしょうか。

もちろん最初は損得ではなくて、素直に親切な気持ちからでしょう。

自分のために手でドアを開けてくれる人は、もちろん相手からも親切な人に映ります。そんな人はあまりいませんしね。

でも難しいのは、これが何度も続くとかえって相手に負担感を与えてしまうことです。そのことに気がついていないわけです。

「なんだかいつも気を使わせて悪いなぁ」と、わたしだったら思います。

気を使う人に対して、相手は気が重くなる。

相互に「残念なお話」ですね。

当人はよいことをしたのに相手はちょっと迷惑とすら思うのは。

さらにはドアを開けてくれないと「今日は開けてくれないなあ」なんて甘えも生まれたりして。

気を使う人は、自分も相手も気が重くなる。

それよりは、「あれ、○○さんと一緒にいると、いつもスムーズにドアが次々と開くな。まるで魔法みたい」と感じてもらえるほうがいいですね。

ようは「気が利く」というのは行為そのものが自然に組み込まれていて、あたかも最初からそうだったかのように感じさせることで、相手に負担を感じさせない配慮です。

ドアにたとえてお話ししましたが、仕事で発生するあらゆるやりとりにいえることだと思います。

(秋田道夫著『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』から一部を抜粋・改変したものです)