いつも他人と比べてしまう」「このままでいいのか、と焦る」「いつまでたっても自信が持てない…」。仕事や人生に悩んでしまった時、どう考えればいいのでしょうか。『機嫌のデザイン』の著者であり、数々の名言がTwitterで話題となった、プロダクトデザイナー・秋田道夫氏の「毎日を機嫌よく生きるためのヒント」を紹介します。

入社式の日に「定年退職の日」を想像してみるPhoto: Adobe Stock

入社式の日に定年の日を想像する

最初に定年を意識したのが入社式の日でした。

二十三歳ですね。

式典に出席しながら頭のなかで、四十年後に定年で退職する日のことを想像していました。

変な青年ですね。

定年とは関係ないのですが、わたしの就職は少々変わっていて、実は会社の募集要項としては「デザイナーの中途採用」だったんです。

そのお話を大学の教授が知り合いから聞いて「アキタくん受けてみない」と声がけしてくださって、それで当時目黒の青葉台にあった会社に面接に伺ったら、すんなりと合格をいただいたわけです。

中途採用というお話は全然わたし自身は分かっていなくて、合格が決まってから「一応会社としては中途採用の体裁なので、申し訳ないけれど三月からこちらにきて働いてください」というお話になりました。

それで三月には会社の寮に入って会社で働いて、卒業式のためだけに名古屋に戻ったという「数奇な人」なんです。

しかし一ヶ月も職場で仕事をすると、なんとなく会社の雰囲気とか仕事の流れとかが分かるものなんですよね。

同期になる人たちと一緒に入社式に出席する頃には、「一年(正確には一ヶ月ですが)」そこにいたような気持ちになっていました。

実際に理解しているかは別にしてですが。

そのわずか一ヶ月の期間で、どうもわたしは会社員としての四十年間をシミュレーションしてしまったんでしょうね。

会社員でも「個人事務所」の気持ちで働く

結果として会社は今も存続していますから、ずっとそこに所属している自分もあったと思いますが、フリーランスのようなスタンスでいたでしょうね。

会社員の頃は、身分としてはたしかに会社に所属していましたが、気分としては“社内個人事務所”の看板を掲げているようなスタンスでいました。

自分ができること、貢献できることを、会社の中の求められる場所で使ってもらって、給料をいただく。

自分の生産価値が果たしてきちんと機能しているのか、給料に見合った仕事ができているのかという点をいつも気にしていました。

逆にいうと、「もし何か失敗してしまったとしても、こんなわたしを雇ったほうが悪い」なんて開き直っていました。

臆病なくせにその頃は大胆だったと思います。

自分のやりたいこと、できることが、会社の基準のなかで評価されるかどうか。

まわりと比べてどうこうとかあまり考えて悩んだことはありませんでした。

(秋田道夫著『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』から一部を抜粋・改変したものです)