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岸博幸のクリエイティブ国富論

IT戦略で日本の遥か先を行くラトビア

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
2013年4月26日
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 つまり、ラトビアではネットの力を使って国民の政治への信頼を取り戻そうとし、結果的に直接民主主義に近い国民の政治参加を可能にしたのです。それ自体すごいことですが、もう1つ評価すべきは、通常こうしたウェブサイトは政府が自ら作るものなのに、ManaBalssは2人の20代の市民が作ったということです。民間のネット上での取り組みをラトビア議会が自らのシステムに取り入れたのです。

 ちなみに言えば、ヨーロッパではラトビア以外でもネットを活用した市民の政治参加の取り組みが進んでいます。例えば、フィンランドとECは昨年、市民によるイニシアティブを募る公式のプラットフォームをネット上に開設しました。また、アイスランドは最近、ネット上で憲法改正に関する市民からの提案を募集し始めました。

周回遅れの日本のIT戦略

 もちろん、ラトビアなどは小国であるがゆえにこうした大胆なIT・ネットの活用が可能になっているという面は否定できません。それでも、ラトビアでの取り組みと比べると、対面原則・書面交付原則の撤廃もできない日本政府が検討しているIT戦略は確実に2周くらい周回遅れになっていると言わざるを得ないのではないでしょうか。

 安倍首相は日本経済の復活に向けて、大胆な金融緩和とTPP交渉への参加を自らリスクを取って決断しました。その改革的な姿勢は高く評価すべきですが、だからこそ、成長や生産性を高める重要なツールとなるIT戦略についても、安倍首相をサポートする立場にある閣僚や官僚が同じくらいのリスクを取るべきではないでしょうか。

 IT政策担当大臣をはじめとする関係者は、ぜひこの連休中にラトビアなどでの先端的な取り組みを勉強して、一からやり直していただきたいと思います。

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岸 博幸
[慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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