鈴:彼らは領有権を主張していますが、尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、領有権の問題はそもそも存在しません。

F:複雑過ぎるな……。

広報担当:議論が白熱している最中に申し訳ありませんが、時間となりました。

中:ご挨拶だけと思っていたのですが、思いのほか長くなってしまいました。

 定時から始まり、キッチリ30分。さすがは秒単位で動く航空自衛隊である。ここで鈴木繁直氏から南西航空方面隊司令部 防衛部長の奥田将善氏にバトンタッチ。南西航空方面隊副司令官の中島隆幸氏は引き続き同席されている。

領空と領海の距離はまったく同じ
では何が違う?

南西航空方面隊司令部 防衛部長 奥田将善氏(以下、奥):白熱しておられましたね。

南西航空方面隊 司令部 防衛部長 奥田将善氏南西航空方面隊 司令部 防衛部長 奥田将善氏

F:はい。のっけから、何ともきわどいお話を伺いました。ド素人の質問で恐縮ですが、領空と領海はなにが違うのですか?基本的なことを分かっていないので教えてください。

奥:基線から12マイルまでが領海で、その真上の空が領空です。ですから領空と領海の距離はまったく同じです。大きな違いは「無害通航権」の有無です。領海にはUNCLOS(United Nations Convention on the Law of the Sea:海洋法に関する国際連合条約)で定められた「無害通航権」というのがあるんです。

F:無害通航権……それはどういう。

奥:簡単にいうと、たとえ他国の領海の中であっても、その国の平和や秩序や安全を害さない限り、自分の国旗を上げて継続的かつ迅速に抜けていく分には自由に通航できますよ、という権利です。これは軍艦でも民間の商船でも同じです。あ、潜水艦はダメです。潜水艦が潜航したまま通航するのは禁止です。でも浮上して、普通の船のように国旗を上げていれば、通航できます。

中:観測船が観測を行うのも禁止です。

F:観測しているかどうかなんて、外から見ても分からないじゃないですか。

中:そこなんですよ。例えば観測機器を曳航しているとか、明らかにそれと分かる場合は領海内において必要な措置を執ることができるんですが。

F:軍艦も通航できるとは。これは驚きです。船の台数や大きさも関係ないのですか?

奥:関係ありません。ルールに則っていれば、その沿岸国が通航の妨害をすることはできません。ですが、空はいけません。領空には完全かつ排他的な主権があり、無害通航権はありませんから、他国の航空機が勝手に領空を通過しては絶対にいけないんです。これが領海と領空の大きな違いです。