重要なのは、単なる目標設定ではなく、どんな人、どんな組織になりたいか(アイデンティティ)を明確にすること、「アイデンティティベースの習慣形成」です。例えば「禁煙する」(Do)という目標ではなく、「非喫煙者である」(Be)というアイデンティティを設定することで、自然と禁煙の習慣が形成されます。

 組織に当てはめると、組織のアイデンティティを「ソフトウェアファーストな企業」と設定し、そのアイデンティティに基づいて日々の行動や習慣を積み重ねていくことが重要です。

DX化は「自社はどうなりたいのか」
でしっかり考えて進む

 今回の『ソフトウェアファースト』改訂にあたり、私は「我が社ではDXをどう進めたらよいでしょう」と質問する初版の読者の方々の顔を思い浮かべました。その方々の中には既に「こうすべき」という答えがありそうなのです。人に頼り、世間に合わせるのではなく、自分は、自社はどうなりたいのか、しっかり考えて進んでもらえればと考えています。

 今後、日本はソフトウェアだけでなく、その価値を最大化するためにハードウェアやプロセスの変革も進める必要があります。諸外国はすでにソフトウェアを中心としたビジネスモデルを構築し、組織全体の最適化を図っています。

 日本もこの潮流に乗り遅れず、ソフトウェアの可能性を最大限に引き出し、未来を築いていく必要があります。ソフトウェアファーストが当たり前となり、日本企業がソフトウェアを武器にグローバルな競争力を持つ時代が来なければ、国際競争から取り残される危機が現実のものとなるでしょう。

 ソフトウェアファーストが古い概念となる時代の到来は、私にとっては複雑な感情を伴いますが、同時に日本がIT先進国として再び輝く道でもあります。希望ある未来は、私たちが今、行動を起こすことで形作られるのです。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)