自動車の大変革をもたらすソフトウェア化、日本勢は“SDV”でも戦えるのか100年に一度のクルマの大変革期。鍵を握るのはソフトウェアだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

100年に一度の大変革期を迎えた自動車業界。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、その鍵を握るのは「ソフトウェア化」だと言います。ソフトウェアに定義されたクルマ=SDVとは何か。及川氏が最近の業界のトレンドとともに解説します。

100年に一度の変革
真っただ中にある自動車業界

 自動車業界は現在、100年に一度の大変革期を迎えています。業界を大きく動かしているのは「CASE」と呼ばれる4つの要素。「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Sharing(シェアリング)」「Electrification(電動化)」です。

 日本では、このうちのシェアリング、「日本版ライドシェア」の解禁が注目されています。2024年4月に導入された日本版ライドシェアは、タクシー不足が見込まれる特定の地域・時間帯に限って、一般市民が自家用車を使い、有償で乗客を運ぶことが許可される仕組みです。海外のUberやLyft、Didiなど、オンラインプラットフォームを通じてドライバーと乗客を結びつける有償ライドシェアサービスとは異なり、日本ではタクシー会社が運行管理を担当します。

 残りの3要素のうち、コネクテッド技術は通信回線がどこからでも安く、速く、安定して使えるようになったことで、大きく進化しています。クルマもネットワークに接続され、リアルタイムでの情報共有や遠隔診断が可能になりました。

 自動運転技術はセンサー、カメラ、人工知能(AI)を統合して、車両をドライバーの介入なしに運転できるようにする技術です。自動化の程度により、0から5までのレベルに分かれていますが、ドライバーの介入がいつも不要な完全自動化(レベル5)はまだ実現していません。現在は、高速道路など特定の状況下のみ、システムに運転操作を任せることができるレベル3が実用化されています。

 電動化は今、最もホットなトピックといえます。CO2など温室効果ガス排出量削減の側面から始まったトレンドですが、各国の自動車産業育成や保護主義政策とも連動。一時はバッテリーEV(BEV)へ一気にシフトするかのように見えました。現在は、車両価格の高騰や充電インフラ整備の遅れなどから、地域によっては一時的にEVへの転換がスローダウンしています。ただし、環境問題そのものがなくなるわけではないので、今後も電動化の流れは強まっていくでしょう。