気鋭のノンフィクションライター・甚野博則氏の新刊『ルポ 超高級老人ホーム』が話題だ。富裕層の聖域に踏み込んだ同書では、選ばれし者のみが入居する「終の棲家」を徹底取材している。本稿では、超富裕層を顧客にプライベートバンク事業を展開するアリスタゴラ・アドバイザーズ会長の篠田丈氏に、富裕層の中での密かなブームについて話を伺った。(取材・構成 ダイヤモンド社書籍編集局)
富裕層の中で広まる
「高級会員制人間ドック」
――『ルポ 超高級老人ホーム』では、高級老人ホームでのサークル活動についても描かれていました。富裕層の中で密かにブームとなっていることはあるのでしょうか。
篠田丈会長(以下、篠田):健康に関心の高い方の中で「高級会員制人間ドック」が流行っています。たとえば天皇を診たお医者さんが診てくれるとか、PET検査がついてますよとか、そういうオプションがあるんです。プライバシー保護の視点で、人間ドックに行っても誰とも出会わないで検査を終えられるのも人気の理由です。
だから、入会金が数百万円かかるところもあります。料亭と同じで、他の人と会わないという点は富裕層に人気の理由でしょうね。
――何歳くらいから健康を意識しだすのでしょうか。
篠田:皆さん若い頃からごく普通に意識しています。30代はさすがにあんまり聞かないですけど、40代の方は多いです。50代はほとんどの方が通われています。全く健康を気にしない人もいますが、大体は人間ドックなんかに行ってはいますよね。
実はあの「名画」も日本に
――他にはブームなどありますか?
篠田:やはり美術が好きな方はいますね。仲良くしている美術商を通して、次から次へと美術品を買ったりしています。投資目的ではなく、完全に趣味です。なので、実はすごい有名な画家の絵が個人のお宅に飾られていることもあります。でも、絶対に言えないですよね。
そういう方からは「40億円ぐらいする絵画を知られずに売りたい」とかそういう話もきます。売る理由は、相続を見据えているというよりは飽きた、ということが大きいようです。
――高額な物品を買うのは節税の意味もあるのでしょうか。
篠田:新興富裕層の人は車が好きですよね。それこそフェラーリだとかランボルギーニ……はあんまり聞かないけど、アストンマーティンとか。もちろん節税で買ってる方もいるんですが、車でできる節税ってたかが知れてるんです。だから好きで買ってる方が多いですね。
アリスタゴラ・グループCEO
2011年3月から現職。1985年に慶応義塾大学を卒業後、日興証券ニューヨーク現地法人の財務担当役員、ドレスナークラインオート・ベンソン証券及びINGベアリング証券でエクイティ・ファイナンスの日本及びアジア・オセアニア地区最高責任者などを歴任。その後、BNPパリバ証券で株式・派生商品本部長として日本のエクイティ関連ビジネスの責任者を務めるなど、資本市場での経験は30年以上。現在、アリスタゴラ・グループCEOとして、日本、シンガポール、イスラエルの拠点から、伝統的プライベートバンクと共に富裕層向け運用サービスを展開、また様々なファンドを設定・運用、さらにコーポレートファイナンス業務等を展開している。