藤本茂さん(シゲルさん)がこれまで売買してきた銘柄は、実に1200ほどに上る。特集『あなたも億り人に!? 凄腕シニア投資家が教える 株式運用術』(全17回)の#9では、銘柄を選ぶ際の基準や、売買タイミングを計るために活用するテクニカル分析について解説しよう。(ライター 松田小牧)
チャートを駆使し売買の機会を探る
“デイトレの極意”を直伝!
87歳現役トレーダーのシゲルさんは日々、何を売買の判断材料としているのか。その投資手法について、詳しく見ていこう。
まず、売買の中心となるのは中小型株だ。特に業界にこだわりはないが、得意な銘柄は車や精密機械に関連する企業が多い。
売買する銘柄の基準については、「そりゃもう、増収・増益・増配・自社株買い・優待ですよ」と話すシゲルさん。中でも重視しているのが、「増収・増益」だ。「会社四季報」(四季報)のデータと企業の決算発表などから、特に経常利益と純利益の伸び率を注視する。
買うべきは例えば、第3四半期まで順調に売り上げを伸ばしながらも通期の予想を修正していないような企業や、想定為替レートを実勢より円高方向の1ドル=135円に設定しているような輸出に強い企業だ。「こういう会社は、まず間違いなく予想よりも売り上げがいい。そうすると株価もついてくる。デイトレといっても、そういう株を買うのがええね」。
日々のニュースも重要な判断材料だ。取り上げられた企業はもちろんのこと、その企業の子会社やライバル企業まで、「この会社の業績がいいなら、当然この会社もよくなるはず」などと連想して買い注文を出すこともある。
なお、配当や優待については、「株価を上昇させる要素」という意味で重視するものの、短期売買中心でインカムゲインに期待していないシゲルさんにとっては、「あればうれしい」程度のもの。資産20億円ともなると、仮に全ての資産を4%の高配当株に振り向けた場合、年間の配当は8000万円ほどになる。現実のシゲルさんの配当利回りは、平均で約2%。その上で、あえてリスクを冒してデイトレードを続けている。
“安定”の道を選ばないのは、「投資が好きだから」の一言に尽きる。シゲルさんが一番うれしい瞬間は「資産が増えたとき」ではない。「自分の読みが当たったとき」だ。資産増加は、あくまで読みが当たった結果。喜びを最大化させるには、値動きの激しい中小型株のデイトレが最適な手法なのである。
次ページでは、「RSI」や「MACD」といった、シゲルさんが実際に売買タイミングを判断する際に活用しているテクニカル分析指標や、ローソク足分析の勘所を解説。資産20億円超を築いた87歳現役トレーダーの投資手法を、余すことなく明らかにする。