年収103万円の壁、実は大したことない!?手取りがガクッと減る「本当に怖い壁」とはIllustration:PIXTA

10月末に行われた衆議院議員選挙で、公示前から大きく議席を増やした国民民主党。同党が訴えたのが「手取りの増加」、具体的には「103万円の壁」の見直しだ。この「103万円の壁」とは一体何なのか。実は、年収にはこれ以外にもいくつかの壁がある。知っておくべき壁とは何か、実際の手取りにどのような影響が出るのか、見ていこう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

“手取りスト”のFPが
「103万円の壁」に違和感を覚えたワケ

 連日、「103万円の壁」が話題になっている。衆議院選挙において、国民民主党が「103万円の壁」を取り払い、手取りを増やすと公約に掲げたからだ。

「年収の壁」と言えば、パート収入の壁である「106万円」が広く知られているが、話題の「103万円の壁」は税金の壁。国民民主党の玉木雄一郎代表は、所得税がかかり始める103万円を「壁」とし、その壁を178万円に引き上げる政策の実現を与党に迫る。

 手取り計算が好きな、自称「手取りスト」の筆者にしてみると、103万円を「壁」と言っていることに違和感がある。なぜなら、年収が103万円から1万円増えても、所得税は500円しかかからないからだ。

 一方、パート収入の「106万円の壁」は、年収が壁を越え107万円になると、いきなり約15万5000円もの社会保険料がかかるようになる。所得税の壁と社会保険料の壁は、仕組みが大きく異なるので、パートタイマーの人は違いをよく知っておく必要があるだろう。

「収入の壁」とは、言い換えれば、基準額を超えると、崖から落ちるように手取りが減る年収のこと。その意味で考えると、税金は崖から落ちるように手取りが減るわけではないので103万円は「壁」とは言えない。

 以下のグラフは、パートで働く人の額面年収に対する手取り額を試算したものだ。社会保険料がかかり始める106万円を超すと、崖から落ちるように手取り額は減少する。これが「106万円の壁」である。

手取りグラフ筆者作成
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 では、所得税がかかり始める103万円はどうか。前述のように、年収が1万円増えても所得税額は500円であるし、大きな影響はないことがグラフからも読み取れる。

 実は「収入の壁」は、103万円、106万円以外にも複数ある。全ての壁を怖がる必要はなく、手取り額に大きな影響があるもの、ないものがあるので、それぞれの違いを解説しよう。その上で、国民民主党案の「103万円の壁引き上げ案」について考えてみる。