以上のように、わずかなアカウントによる投稿が広く拡散され、あたかも「ネット世論」であるかのような様相を呈することはよくあります。

 例えば、ネット上の炎上現象を例にとってみましょう。国際大学の山口真一氏が具体的な炎上事例をいくつかピックアップして調査したところ、次のようなことが明らかになりました。

大炎上に見える事件でも
実際の批判者はほとんどいない

 まず、炎上に参加する(書き込みをする)人の数は炎上1件当たり2000~2500人程度。これがX上で起こったとして、それら書き込みをリポストやURLのシェア等で拡散する程度は、オリジナルの投稿者数の21.4倍でした。

 例えば、2000人が炎上に参加したとして、リポストやURLのシェア等を含めた総投稿数は4万2800件となります。これがさらに各ユーザのフォロワーの目にとまることになります。

 2016年時点での平均フォロワー数は648で、このうち10%がその炎上を目にすると仮定すると、わずか2000人が参加した炎上ネタを、約280万人の人が目にすることになります。これにさらに、まとめサイトやネットニュースでの取り上げが行われると、より多くの人が目にすることになります。しかし、当初炎上に書き込みを行った人はわずか2000人でした。

 以上のように、オリジナルの炎上参加者は非常に少なくても、それを目にする人は非常に多くなるという現象がソーシャルメディアでは生じるのです。