「シロクマ実験」が教える心理
否定するほど逆に意識してしまう

 心理学に「シロクマ実験」という有名な実験があります。シロクマの映像を見せて、Aグループには「シロクマを覚えておいてください」、Bグループには「シロクマのことを考えても考えなくてもかまいません」、Cグループには「シロクマのことをぜったいに考えないでください」とお願いしたところ、シロクマの映像を一番覚えていたのは、「ぜったいに考えるな」と言われたCグループだったのです。

 つまり否定すればするほど、否定したものが自分の中で強化されてしまうわけです。「電話がこわい」という感情も、「こわいと思ってはぜったいダメだ」と否定すると、ますます強化されて、こわさが増す可能性があります。

書影『電話恐怖症』『電話恐怖症』(朝日新聞出版)
大野萌子 著

 ですから否定しないこと。むしろこわいと思ったほうがいいでしょう。

 無理にその気持ちを消したいとか、克服しようと思わずに、「ああ、今、私はこわいと思ったんだ」と抑えつけずにそのまま感じて受け止めるのです。

 そして私の場合は、「ああ、こわかった。すごくいや。あの人、むかつく」などその気持ちをそのまま感じつづけます。ずっと感じていると、とても気分が悪く、むしゃくしゃしますが、経験的にそのほうが早く気持ちに折り合いがつけられます。「ま、いいか」と思えるようになるのです。