中国株式市場は再び変動の激しい一年となりそうだ。米国の通商政策がもたらす潜在的な脅威に対し、中国政府の景気刺激策が揺れ動く影響を市場は見極めようとしている。
中国が9月下旬に打ち出した前例のない経済てこ入れ策は市場に弾みをつけ、低迷していた中国株に対する投資家心理を押し上げた。10月初めの6営業日に上海総合指数は急騰し、2022年2月以来の高値を付けた。
これを機に中国株復活への期待が高まった。だが、それに続く一連の景気刺激策は失望と売りを招いている。
高まる米中間の緊張がリスクオフ・ムードに拍車をかけている。ドナルド・トランプ前米大統領が再選を果たした今、新たな貿易戦争のリスクが顕在化している。そのため、各方面で不透明感が強まっており、中国株の先行きには暗雲が漂う。
「市場は不透明感を嫌気する。中国が直面するのは山のような不透明感だ」。パインブリッジ・インベストメンツのマルチアセット部門グローバル責任者、マイケル・ケリー氏はこう述べた。
投資運用会社ヌビーンでマクロクレジット部門責任者を務めるローラ・クーパー氏は、それ以前の景気刺激策を受けて中国株にやや強気に転じていたという。
「だが、関税を巡る不透明感を踏まえ、その見方が後退している」。グローバル投資ストラテジストでもあるクーパー氏はこう話す。
中国当局が最近発表した景気刺激策は市場に好感されなかった。直近の刺激策は地方政府の債務問題を中心に据え、他の核心的な問題を避けている。これは一つには、新たな貿易戦争に備えて中国が「弾薬」を温存しているせいかもしれない。
もし中国が市場の望む「ビッグバン」的な景気刺激策を打ち出せば、再び上げ基調に転じる可能性は高い。ただ、それが不十分かつ遅きに失する懸念はある。
「この重要な局面で、景気刺激策をどれだけの規模でどれほど迅速に打ち出せるかを注視している」。ヌビーンのクーパー氏はこう述べたが、米国の状況がより明らかになる来年1~3月まで中国当局が待つリスクも念頭に置く。「われわれの見るところ、それでは恐らく遅すぎるだろう」
モルガン・スタンレーのエコノミストは、中国が2025年に国内消費と住宅を対象にした十分な刺激策を前倒しで実施する可能性は限定的だとみている。その理由の一つは、福祉国家のような支援が期待される前例をつくることに懸念があるためだ。
米国の関税引き上げやその他の対中制限措置が拡大される可能性は、企業収益や市場の評価に一段と強い逆風になりかねないと、モルガン・スタンレーのエコノミストはリポートで指摘している。
より明確な状況が分かるまで、ポートフォリオマネジャーが勧めるのは国内需要が強く、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)が堅調で、輸出依存度の低い中国企業に注意を向けることだ。