ふるまいよしこ「マスコミでは読めない中国事情」Photo:PIXTA

今年の夏、ある事件をきっかけに、中国の金融業界に激震が走っている。投資銀行に勤める30歳のエリート女性が、オフィスのあるビルから投身自殺をしたのだ。事件を機に「歴史のゴミ時間の真っただ中」という流行語まで生まれた。彼女はなぜ亡くなったのか。そして、中国の金融業界で今何が起こっているのか……?(フリーランスライター ふるまいよしこ)

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中国の金融業界で激震が続いている

 中国経済の急成長とともに好景気を謳歌し、ここ10年ほどブイブイ言わせてきた中国金融業界で最近、激震が続いている。

 一国の経済が悪化すれば、金融業界も好況が続くはずはない。だが中国の場合、政府は表向き経済が悪化している事実を認めず、失業者の増加や新卒者の就職事情の悪化をその個別の統計項目を発表しないという形で、ネガティブな事実が人々の目に触れないようにと手を尽くしている。金融業界でも、日頃から国策に基づいて動く国有金融や政府が直接管理する業界団体が強い発言権を持っていることから、業界アナリストたちが事態を悲観的に述べることすらはばかられる状況が続いている。

 それでもメディアや「人の口」は、業界が大きな不振の真っただ中にあることを、別の形で伝え続けている。たとえば、今年上半期のうちに証券業界の従業者が1万人も減ったこと。その報道によると、業界の80%近い証券会社で解雇や早期退職が実施され、特に業界トップクラスの証券会社ではどこも一挙に300人以上も職員数を減らしたとされる。

 さらにもっと長いスパンで振り返ると、ここ2年間のうちに10%以上の職員が「流出」した企業も少なくないという。そうした人員を受け止めた一部の企業は職員数が増えているものの、業界全体で見るとやはり従業員の減少傾向は続いている。