バイデン米政権は、半導体製造支援に向けた補助金を任期終了前に約束通り米インテルなどに支給しようと急いでいる。補助金は米半導体産業の復興を目指して2022年に制定された「CHIPS法」に基づくもので、ジョー・バイデン大統領が自賛するプログラムの一つだ。
商務省はすでに、CHIPS法に基づく390億ドル(約6兆円)の補助金の大半を暫定的に割り当てている。ただ、そのうち約300億ドルでは政府と企業との複雑な交渉が続いており、新政権の発足を前に宙に浮いた状態となっている。
割当額が最も大きいのは米半導体大手 インテル で、最大85億ドルの工場プロジェクト向け補助金に加え、最大30億ドルの防衛産業関連施設向け補助金の対象となっている。同社はパソコン(PC)やサーバー向け半導体を製造する中核事業が苦戦を強いられており、補助金はアリゾナ、ニューメキシコ、オハイオ、オレゴン各州の大規模施設向けの資金として当てにしている。
商務省はドナルド・トランプ次期大統領の下で新政権が発足するまでの今後2カ月間で、できるだけ多くの補助金支給を最終決定する意向だと事情に詳しい関係者は語る。当局者や企業幹部らは、最終決定に至った補助金支給には法的拘束力があり、議会を通さない限り撤回することは不可能との認識を示している。
トランプ氏は選挙活動中、CHIPS法の先行きに暗雲をもたらす発言を行った。ポッドキャスト司会者のジョー・ローガン氏に語ったのは、政府はCHIPS法で補助金を支給するのではなく、輸入する半導体に課税することで米国内の半導体生産を後押しすべきとの考え方だった。
ローガン氏との10月下旬のインタビューでトランプ氏は「あの半導体ディール(取引)はひどすぎる」とし、「半導体を作らせるために大金を払うなんて、そんなやり方はない。10セントも出す必要はなかった。一連の関税で対応できたはずだ」と話した。
新政権下で何が起こるかははっきりしない。CHIPS法は超党派の支持で可決され、同法が補助金の支給対象とする半導体プロジェクトの多くは共和党議員の選挙区を拠点とする。トランプ氏に近い関係者と話をした業界幹部の間には、政権交代後も同法は存続するとの見方もある。
マイク・ジョンソン下院議長(共和、ルイジアナ州)は大統領選前に、共和党はCHIPS法の廃止に「おそらく」取り組むだろうと述べた。ただ後の発言では、同法は廃止対象ではなく、「コストのかかる規制や『グリーン・ニューディール』の要件」を排除するために簡素化される可能性があるとした。