米国大統領選挙においてトランプ氏が優勢になりつつある。金融市場も株高、金利高、ドル高という形でトランプ氏勝利を織り込みつつある。ただ、勝利後の上昇は来年には止まりそうだ。その背景を探る。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
トランプ氏勝利を織り込み
始めた金融市場
9月17日、18日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.5%の利下げが決定され、25年末までに、さらに1.5%程度の利下げが行われることも示唆されたため、米国10年債利回りは3%台後半で落ち着き始めたのだが、10月に入り上昇し始めた。
米大統領選まで1カ月を切るなか、「オクトーバー・サプライズ」への警戒感も高まったのだが、まずはイランがイスラエルに対して弾道ミサイルによる攻撃を行い、中東不安が高まった。
イスラエルのネタニヤフ首相はイランへの報復をほのめかしたのだが、イランの石油関連施設への攻撃が俎上に載ったことなどから、原油価格が一時急上昇し、インフレ期待が高まるなかで米国10年債利回りが上昇した側面もあった。
共和党の大統領候補であるトランプ氏による後ろ盾を望むネタニヤフ氏の行動のいかんによって、バイデン現政権および民主党のハリス候補が不利に立たされるとの思惑もまた強まったのだが、このようなイスラエルの動きを反映したかどうかは分からないものの、選挙戦におけるトランプ氏優勢を伝える声も強まった。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各種世論調査の平均支持率によれば、全米ではハリス氏とトランプ氏の支持率がほぼ拮抗した状態が続いている。
一方、アリゾナ、ネバダ、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ノースカロライナ、そしてジョージアの激戦7州においては、僅差ながらもトランプ氏の優勢が伝えられるようになり、市場ではトランプ氏の勝利を意識するような動きが見られ始めた。
次ページでは、金融市場のトランプ氏勝利を織り込む動きを検証し、先行きを予測する。