中学受験のプロである安田理さんに中学受験の新常識を教えてもらう連載。第5回は「子が幸せになる勉強法」。中学受験を通して「他人は競争相手」という価値観を刷り込まれてしまうと40代で“ある壁”にぶつかると安田さんは指摘します。中学受験に潜む「大きなリスク」と「対策法」を教えてもらいました。(聞き手・構成/教育アドバイザー 鳥居りんこ)
難関校に受かる子に共通する
「親」の特徴
――子どもが難関校に受かるご家庭にはどんな特徴があるのでしょうか?
まず、子どもが本を読んでいますね。幼い頃から身近に本がたくさんあるんです。しかも、無理矢理に読まされているのではなく、習慣として読んでいます。だから、苦痛どころか娯楽のひとつなんです。
――それは感じます。私は「頭のいい子を育てる三種の神器」と呼んでいるんですが、それが「ホワイトボード・百科事典・重松清」(笑)。これが子どもの手の届くところに置いてあるご家庭が多い。決してモデルルームのように整然としているわけではないのですが、それでも子どもがどこに何があるのかを把握しているご家庭が多いという印象を持っています。
整理能力はやっぱり大事だと思います。、教材やプリントがすぐに見つけられるように整理されているお子さんは、教材やプリントの内容まで整理できている傾向があります。
しかし、実際は整理整頓を親がやりすぎる傾向があるんですよ。特にプリント整理は親のほうが熱くなりやすい。コピー機を買って過去問を原寸大にコピーしたりしますから。
合格体験記で「こうやった」という情報を仕入れては、すぐに真似をする親も多いんですが、それを片っ端にやっているのはいい方法だとは思いません。子どもより先に親が疲れてしまうからです。
――確かに、疲れ果てている親からはあまり良い報告は聞かないですね。
やはり、中学受験は親によって決まる部分が大きいんです。親が「成功」に向かってできることの1つは、子どもに対してどれだけ大らかに接してあげられるかということです。昔で言うところの「肝っ玉母さん」タイプでいられるかどうかがカギになります。
本番が近づいてくると親がキツネ顔になって厳しい言葉をかけがちになりますが、それはまずい。子どもにとって、かなりのプレッシャーになってしまいます。勉強は自分のためにやるもの。親のための受験になってはいけません。
子育ての最終的な目標は、ひとり立ちさせることなのに、中学受験では、親がすべてやってしまうケースが多い。それは子の自立と逆行しています。目先の成績や進学先の偏差値にとらわれず、子どもの成長を長い目で見られる親が子育てに成功すると思います。
中学受験で「競争を覚えた子」は
40代で不幸になる?
――おっしゃるとおりではあるのですが、一度、中学受験に足を踏み入れたら、どうしても子どもの成績が気になってしまう。たとえ親がかりでも合格させたいという親も多いです。