米航空宇宙大手ボーイングのケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は20日、従業員に対し、かつて製造業界を席巻した同社は社内文化に深刻な問題を抱えており、もう2度と間違いを犯すことは許されないと述べた。
オルトバーグ氏は8月にCEOに就任した。この日は1時間に及んだ全社会議でボーイングの現状を率直に評価し、肥大化した管理職、無駄の多い支出、内部対立や責任回避の社内文化を指摘した。
「(欧州航空機大手)エアバスに勝つ方法を思案するより、社内での言い争いに多くの時間を費やしている」とし、「ボーイングが抱える問題点の話ばかりで、誰もがうんざりしている。私もここに来てそれほど長くないが、うんざりしている」と語った。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が会議の録音を確認した。
オルトバーグ氏によると、ボーイングは巨額の手元資金が無くなりつつあり、投資家に新たな救済措置を求めることはもはや不可能だ。最近では手元資金を強化するため、新株発行で240億ドル(約3兆7000億円)を調達した。一部の研究開発への支出は遅れる可能性があるという。
キャッシュフロー(現金収支)については、「737」型機の生産を1カ月当たり38機に引き上げるまでプラスに転じることはないと語った。当初は2023年末までに38機に引き上げることを目指していた。
ボーイングは依然として、主要工場を稼働停止に追い込んだ8週間に及ぶ機械工のストライキの余波に対処している。オルトバーグ氏は、ボーイングの官僚的体質を是正し、ビジネスの実態を反映させるため、数千人の従業員を解雇したと述べた。
ドナルド・トランプ次期大統領と会談したことも明かし、トランプ氏が提案する関税が米国有数の輸出企業であるボーイングにもたらす潜在的な影響を巡り議論したと話した。
ボーイングは中国の航空会社にジェット機を販売しているが、米国は中国から航空機を輸入していないため、中国とのいかなる貿易戦争もボーイングに打撃を与える可能性があると警鐘を鳴らした。
「ボーイングは多くの浮き沈みに直面してきた」とし、「今はどん底にいる」と従業員に語りかけた。「今日、われわれには現状から脱却し、真の改善を遂げる機会がある」と続けた。
(The Wall Street Journal/Sharon Terlep)
※この記事はWSJにて2024年11月21日 07:54 JSTに配信されたものです。