迫り来る貿易戦争はアジア諸国に多くの頭痛の種を生み出すだろう。米ドル高もその一つだ。
ドルはドナルド・トランプ氏が米大統領選で再選されて以来、上昇している。同氏が提案する大規模な関税や減税、移民への取り締まり強化がインフレを押し上げるという予想がその一因だ。そうなれば米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を長期間、高水準に維持せざるを得なくなる。米国債利回りの大幅な上昇からこうした見方が読み取れる。高い金利は通常、通貨の魅力を高める。これら全てがアジアの中央銀行に深刻な問題をもたらすだろう。
トランプ氏の主なターゲットは依然として中国ではあるものの(同国からの輸入品に60%超の関税を課す可能性をちらつかせている)、付随的な影響がアジアの相互に結びついた経済全体に波及する可能性がある。中国を除くアジアは米国の需要にますます依存しており、モルガン・スタンレーによると、米国向けの輸出の割合は2018年10月の11.7%から現在は14.7%に上昇している。このシフトは、中国からの輸出が 東南アジア諸国を経由して行われるようになった ことを一部反映している。
対ドルでの通貨安は、米国製品と比べて輸出品の競争力を高めるため、関税引き上げの打撃を和らげる可能性がある。ただその一方で資本流出を加速するリスクもある。これは 不動産市場の低迷 を受けた景気減速に直面している 中国にとって、特に課題となる 。