「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノ―ト』が発刊されました。本記事では著者である萩原礼紀氏のインタビュ―記事をお届けします。
知らぬ間に高齢の親を追い込んでしまう危険な言葉
――「高齢の親が自分の意見を言ってくれない」という悩みは多いように感じます。実際はどうなのでしょうか。
萩原礼紀(以下、萩原):「親が煮え切らない態度をとる」という悩みは非常に多いです。たとえば、子どもが「どうしたいの?」と聞いても、親が「うーん……」と言うばかりで物事が進まないなんて経験は誰もが持っているかと思います。
皆さんからすれば、できるだけ「親の考え」を尊重しようとあれこれと聞いているわけですから、黙られてしまうと困ってしまいますよね。
――親がなにも言わなくなってしまう原因はどこにあるのでしょうか。
萩原:「どうしたいの?」や「はっきりしてよ」という言葉が高齢の親にとっては、強烈すぎる表現なのです。
「どうしたいの?」と聞かれても、どうしたいのか本人もわかっていないこともありますし、「はっきりしてよ」は「白黒つけて」というメッセージに聞こえてしまいます。そのため、親にとっては「答える負荷」がとても大きくなってしまうのです。
――たしかに。少し責められているような言葉になっている感覚もあります。
萩原:まさしくその通りです。これは子ども側にそんな意図がなくとも、親にはまるで「自分は責められている」と受け止められやすい言葉なのです。
――ではどのような声かけをするのがいいのでしょうか。
萩原:たとえば、「言いづらいよね。でも、お父さん・お母さんの考えを教えてもらえると助かるな」と伝えてみたらどうでしょうか。
この伝え方だと、あくまで「困っている私を助けてほしい」というメッセージになります。先ほどの「助けてあげるから意見を教えて」と感じられる伝え方とは違った印象になるでしょう。
また、親からすれば、皆さんはいくつになっても子どもです。その子どもが「助けて」と言っているわけですから、「自分が助けなきゃ」という意識になり、積極的に自分の意見や考えを教えてくれるでしょう。
親が固く心を閉ざしてしまったときは、その心をこじ開けようとするのではなく、自然と開きたくような意識を持っていただけるといいのではないでしょうか。
――ありがとうございます。大変勉強になりました。