「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
老いた親に「伝えたことが伝わらない」
親子の会話で起こりがちなのが「伝えたいことが伝わらない」といった「コミュニケーションの行き違い」です。「本当はこう思っているのに、サッパリ理解されない」「伝えたいことと違うように解釈されてしまう」などです。それによって、子どもがイライラしてしまうことは少なくありません。
コミュニケーションの行き違いが生じやすいケースは、2つあります。
1つは、親が感情に任せて、言いたいことを思いきりぶつけてくるケースです。思いつきや衝動で、言いたいことだけを伝えてくるので「結局、なにが言いたいのかわからない」と、子どもはなりがちです。しかし、こうした場合、実は子どももまったく同じような言い方や立ち振る舞いをしていることが多いのです。その結果、お互いに「わかってもらえない」と感じる最悪の事態になってしまいます。
このような場合は、あなたが「看取者(かんしゅしゃ・看取る役割の人)」になり、親の思い・考えを「正しく言語化」するようにしましょう。「それってつまり、こういうことかな?」などと聞き、まずは「親の言いたいことの真意」を正しく汲み取りましょう。あなたの言いたいことは、そのあとに伝えてみてください。
そうすると「そうそう、私が伝えたかったのはそういうことなんだよ!」などと親は安心し、フラストレーションが解消されます。その結果、さまざまな困りごとに対して、適切に対処できるようになります。
コミュニケーションの行き違いが生じる、もう1つのケースは、親が寡黙な場合です。「自分の考えを述べるのが苦手」「いつも言葉足らずで今一つ伝わらない」といったタイプの親が該当します。
こういったケースでは、子ども側が質問をして、親の思いや考えを引き出すことが大切です。「お父さんのことを大切に思っているから、教えてほしいんだけど」などと、愛情を乗せた言葉を添えてコミュニケーションをとりましょう。
貝のように口を閉ざしている親も、少しずつ自分の本音を教えてくれるようになるはずです。愛のパワーってすごいものなのです。