落ち込むビジネスマン写真はイメージです Photo:PIXTA

褒めてやっても喜んでいる様子がなく、いつも満たされない風でいる...そんな若手に戸惑ったことはないだろうか。心理学者である筆者によれば、彼らの背景には、「頑張らないと愛されない」という根深い思い込みがある。親の強い期待の中で育ち、自己否定と低い自尊心を抱えているのだ。愛され、認められるために価値を生み出すことに、もう疲れているのかもしれない。※本稿は、泉谷閑示『「自分が嫌い」という病』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。

自分を愛せない人は
そもそも愛を知らないのか?

 よく「親から十分に愛されたことがないので、自分は愛というものが分からない」という話を聞くことがあります。確かに、巷では「人は愛されることによって愛を知り、自身も愛する能力が持てる」と考えている方が多いかもしれません。

 これは多分、「親から十分に愛されなかった子どもは、愛する能力を持てないことが多い」という発達心理学的な知見から派生した考え方だろうと思われます。しかし、この考え方を採用してしまうと、「自分を愛せない状態の人は、親もしくは誰かによって、理想的な親のごとく愛してもらえなければ、愛を持てない」ということになってしまいます。しかし、実際にそんなことが起こるのは稀でしょうし、たとえそういう幸運に恵まれたとしても、それが「自分を愛する」ことに直結はしません。むしろ、そんな相手への強烈な依存が形成されてしまうという歪な形に陥ってしまいかねません。