米実業家イーロン・マスク氏は、中国政治の中枢であり壁に囲まれた「中南海」で テスラ 車を同国首相に披露する一方、ドナルド・トランプ次期米大統領とはフロリダ州にある同氏の邸宅「マールアラーゴ」で食事を共にしている。
対立関係にある超大国間の問題を解決するための人脈を持っている人物がいるとすれば、それはまさにマスク氏かもしれない。少なくとも、中国政府の多くの人々はそう望んでいる。
中国指導部は、テスラの最高経営責任者(CEO)として上海への投資に数十億ドルをつぎ込んだマスク氏に対して、ある程度の影響力を持っている。同氏は中国指導部について、「実際には、人々の幸福を非常に気にかけているようだ」と語ったことがある。
こうしたマスク氏の立場は、トランプ氏と同じ考えを持つ多くの対中タカ派とは対照的だ。その中の1人で、財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏は最近、中国を「独裁的な政権」と呼び、米国の雇用を守るためには(中国製品に)高い関税を課す必要があると指摘した。
中国では、マスク氏はアメリカンドリームと米国の技術力を象徴する存在だ。同氏の76歳の母親メイ・マスクさんでさえ有名人になっている。
復旦大学米国研究センターの呉心伯所長は「彼の中国への投資や中国指導部との関係を踏まえると、人々は彼が第2次トランプ政権で建設的な役割を果たすことに強く期待している」と述べた。
この観測には不確実な要因が多い。例えば、マスク氏が仲介役を務めることに関心があるのかどうか、トランプ氏や同氏の政権の閣僚が対中政策へのマスク氏の関与を望んでいるのか、などだ。トランプ氏が既に示唆してきた通り、中国製品に高い関税を課す決意を固めているとすれば、何を言っても無駄かもしれない。