礼司さんは、仕事柄リモートワークが可能だったため、子どもの保育園の送り迎えを担うようになり、明世さんはフルタイムで就業し、時々残業もするようになりました。

 半年ほどして帰宅した明世さんの口からは、楽しい話から職場の愚痴へと内容が変わっていきました。

 直属の上司は事務課で唯一の男性でした。50代後半で見た目もさえず、いつもたばこ臭く、社内では「パワハラがひどい」と非常に評判が悪い上司で、毎日のように嫌みを言われ、嫌がらせを受けているようでした。

 明世さんは「今日も仕事が遅いくせに休憩時間はしっかりとるんだな」と嫌みを言われたとか、「定時で帰りたいのに残業するしかない量の仕事を押し付けられた」と憤慨していました。定時なら18時には帰宅できるはずなのに、その日帰ってきたのは21時半でした。

「無理に働かなくていいんだよ」という礼司さんの言葉に対し、明世さんは「あんな上司に負けたくないから」というのです。明世さんの頑張りたい気持ちを尊重して、礼司さんは引き続きサポートすることにしました。

 そして、2カ月前から週に1日は仕事のことや人間関係のことで、院内の先輩に相談するという理由で、飲んで帰ってくるようになりました。上司以外は女性と聞いていたので、帰宅が23時近くになっても礼司さんは子育てや家事をこなしていました。

 さらに1カ月前から飲んで帰ってくる日が週2~3日になったところで、礼司さんは不審に感じたのです。明世さんの帰宅が遅いことと、仕事と家事と子育てで、夫婦の時間はなくなり、ゆっくり話すこともできませんでした。

 礼司さんは、明世さんの不倫を疑ってはいませんでしたが、誰とどこで何をしているのかを知りたくて、私に相談の電話をくださったのです。

妻の密会相手の正体
まさかのカモフラージュ

 明世さんが勤める病院で張り込みを開始した直後、定時である17時過ぎに明世さんは1人で職場から出てきました。その後徒歩で15分ほど移動した後、個人経営の焼き肉店に入りました。明世さんが座った席には、すでに1人の男性が座っていました。後で分かったのですが、男性は明世さんの直属の上司でした。

 2人は店内で肩を寄せ合いながら親密に会話を交わし、お酒を飲み、食事を終えるとそのまま近くのラブホテルへ向かいました。