プーチンのウクライナ侵攻の言い分が、「典型的なDV男」と瓜二つなワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

「ウクライナはロシアと一体不可分の民族」「ロシアから離れようとするウクライナ人は、米国に魂を売った裏切り者」というのがプーチンの主張。ロシア中心の世界を築こうと躍起になる彼なりの“正義”とは――。※本稿は、駒木明義『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』(朝日新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「ロシアから離れたらウクライナはダメになる」
典型的なDV男と同様のプーチンの言い分

「君は僕と一緒にいるから、世間から一人前に扱ってもらえるんだよ」。

「殴りたくて殴っているわけじゃない。君を正しい道に戻すためなんだ」。

 典型的なDV男の言い分だが、プーチン大統領はウクライナについて、似たような主張を繰り返してきた。

 開戦前年の2021年7月に発表した論文ではこう述べている。

「ウクライナの真の主権は、ロシアとパートナーシップがあるからこそ存在できる」。

 開戦後の2022年4月27日に国会議員らを前に行った演説では、ソ連崩壊に伴うウクライナ独立について「今後も友好的な国だという前提で受け入れた」と主張し、「歴史的なロシアの領土に『反ロ』が創設されることなど誰も予期しなかったし、そんなことを我々は容認できない」と述べた。

 要は、ロシアの言うことを聞かなければウクライナは独立国家として認めない、ということだ。『ドラえもん』のジャイアンの有名なセリフになぞらえれば「ウクライナのくせに生意気だ」といったところだろうか。

 ウクライナが目標に掲げる北大西洋条約機構(NATO)加盟については、全面侵攻開始を前にこう言っていた。

「明日の加盟はないというが、準備ができたらするということだろうか。そうなってからでは手遅れだ」。

 開戦後には「ロシアは隣国に対していかなる悪意も持っていない」と平然と言い放った。

 正義の実現のためにウクライナを攻撃しているというのが、プーチン氏の一貫した主張なのだ。

 DV(ドメスティック・バイオレンス)の比喩を続けるなら、問題の本質は、まさにプーチン氏がウクライナ問題を「ドメスティック・マター(国内問題)」として考えているところにある。