ロシア国営通信社は開戦直後の2022年2月26日、対ウクライナ戦での勝利に備えて用意していた「予定稿」を誤ってウェブサイトに掲載してしまった。
ウクライナの人々からすれば見当違い
プーチンの「母なるロシア」気取り
すぐに削除されてしまった記事によると、プーチン政権が、以下のようなシナリオを描いていたことが浮かぶ。
ロシアから離れようとしていたウクライナを取り戻し、ベラルーシも含めた3ヵ国で構成する「ルースキー・ミール(ロシア世界)」を復興させ、プーチン氏が救世主として君臨する。
実際プーチン氏は2022年4月12日に、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談した際の記者会見で、「我々は、どこまでがベラルーシでどこがロシアかということは気にしていない」「ロシア、ベラルーシ、ウクライナは三位一体だ」と述べた。ベラルーシとウクライナはロシアにとって国内同然だという考えだ。
プーチン氏が抱く思想については、米国屈指のロシア専門家で、クリントン政権で国務副長官を務めたストローブ・タルボット氏が、ロシアがクリミア半島を占領した2014年に、以下のように説明している。
「自分(プーチン氏)はロシアの子供たちを守る母なるロシアに仕える役目を負っており、国境の外側にいる子供たちも、守らなければならない」。
だがウクライナの多くの人々から見れば「勝手に子供扱いしないでくれ」「あなたを親と思ったことはない」ということになるだろう。
特にクリミア占領以降は、ウクライナでの反プーチン政権感情は引き返せないところまで強まっている。ウクライナのロシア離れは、プーチン氏による自業自得と言えよう。
ロシア、ウクライナ、ベラルーシという東スラブ3ヵ国は同根の民族であり、離ればなれなのは不自然な状態だという感覚自体は、ロシアでも多くの人々に共有されている。「兄弟国」という表現もしばしば使われる。
だが、全面的な戦争に訴える2022年以降のプーチン氏のやり方は常軌を逸している。