株式の相続に備えて
やっておくべき対策とは?

 今後市場が流動化したとしても、株式運用が資産形成の選択肢の1つであることは変わらない。そこで、株式相続に備えて「やっておきたい対策」について紹介しよう。

 まず、上場株式と非上場株式では、相続手続きが大きく異なる。上場株式は評価しやすく、換金もスムーズにできるが、非上場株式は相続時の評価方法が複雑であり、売却しにくい。両方の株式を保有しているなら、相続対策を2つに分けて考えて欲しい。

 まず1つ目に、非上場株式を保有している場合だ。自身や親族が経営する中小企業の非上場株式を保有している場合、生前からできる対策には、相続税評価を下げる、生前贈与で保有数を減らすなどの方法が考えられるが、経営状況や家族構成なども踏まえながら対策を進める必要がある。専門知識が不可欠であり税理士に相談してほしい。

 2つ目に、上場株式を保有し相続対策を進める場合は、相続税の試算から始めてほしい。相続税は株式以外の資産も含めて計算するため、保有株式は少なくても、不動産などが多いと相続税が発生する可能性がある。生前から試算しておくことで、納税に必要な現金がいくらなのかも把握できる。

 また、非上場株式と上場株式のいずれの相続対策にも有効なのは、遺言書の作成と生前贈与だ。遺言書があるとトラブルの回避につながる。上場株式は資産として魅力的であり、非上場株式は企業経営に欠かせないものだ。だからこそ、遺産分割協議時に家族内で奪い合いになりやすい。遺言書で誰に渡すのか決めておけば遺産分割協議をする必要がなくなり、スムーズに次世代へ承継できる。

 生前贈与で早めに相続人へ株式を贈与することもおすすめだ。生前贈与は相続対策の効果が高い。株式市場が下がっている時、資産運用としては悩ましいものだが、生前贈与のチャンスとも言える。贈与後に株価が上がっていけば受贈者の財産が増え、結果として相続税の圧縮につながる。

 資産運用は今後も国内外の政治・経済情勢を分析しながら行う必要がある。資産運用の答えは1つではないため、株式以外にも分散投資させながら行うことが賢明だ。

 同様に、株式の相続対策にもさまざまな方法がある。重要なのは、専門家とともに情報を収集し、自分に合った方法を見つけることだ。

 不動産を多く所有している人は生前から相続対策として税理士に相談することが多いが、株式運用をしている人も生前に贈与や資産運用について税理士に相談してほしい。インターネットで気軽に見つかる相続対策が、自身に合っているとは限らない。税のプロフェッショナルを資産運用のパートナーに選んでみてはいかがだろうか。