改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識#8Photo:PIXTA

亡くなった親の遺産を相続することを拒否する相続放棄が増え続けている。2023年は28万件を超え、過去最多となった。ただ、実家は不要といった理由で相続放棄をしようとする際に、意外な落とし穴がある。特集『法改正で知らない間に損をしない!相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#8では、相続放棄で損をしないための注意点を解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

2023年の相続放棄28.3万件と過去最多
民法改正で実家放棄のデメリットも解消

 親の遺産はもう必要ないーー。

 亡くなった親の遺産を相続することを拒否する「相続放棄」が増え続けている。司法統計年報によれば、2023年は約28.3万件と前年から約9%増加し、過去最多を更新した。

 厚生労働省の人口動態統計によれば、23年に亡くなった人の数は約158万人。単純計算すると相続約6件のうちに1件の割合で相続放棄が発生していることになる。

 相続放棄が増えている背景にあるのは、実家の空き家問題だ。本特集#5『実家の空き家を放っておくと「固定資産税が6倍」に!?改正空き家法で損をしない“新常識”』で紹介したように、全国の空き家は約900万戸と過去最多だ。

 相続財産に親が暮らしていた住宅が含まれるケースは少なくない。親が祖父母から相続した家が含まれることもある。子供がすでに持ち家を持っていた場合、将来、再び実家に住む可能性はかなり低いだろう。そして、住むことのない実家を持ち続けていても、固定資産税などの税負担が生じる。

 おまけに23年12月に空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)が改正され、空き家の放置に対するペナルティーが厳しくなった。

 また、23年4月の民法改正で、相続放棄のデメリットが一つ解消された。それまでは相続放棄をしても、相続財産の管理責任は残っていた。つまり相続放棄した実家の空き家を放置してトラブルが発生した場合、責任を問われるリスクがあったのだ。

 これが民法改正によって、相続放棄した場合の管理責任について、放棄の時に「占有」している、つまり亡くなった親の実家に同居しているケースなど、責任の所在が明確化されたのだ。

 実家の空き家問題から解放される手段として関心が高まっている相続放棄。しかし、実際に実行しようとする場合には落とし穴もある。次ページでは、相続放棄を進めるうえでのポイントと注意点を解説する。