改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識#7Photo:PIXTA

相続税を節税する手段として有効な生前贈与。特に子育て世帯の場合には、今しか使えない贈与税の特例があり、計2500万円の非課税枠がある。だが、このお得な節税術はあと2年で消滅してしまうかもしれない。特集『法改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#7では、子育て世代への贈与で有効な特例の活用法について解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

制限される生前贈与を使った節税術
贈与税のお得な非課税枠を使いこなそう

 生前贈与を使った相続税の節税は許さない。

 2024年1月から相続税と贈与税のルールが新しくなった背景には、政府のこんな意思が込められている。

 亡くなった人が生前に配偶者や子供たちなどに財産を贈与しておくと、相続財産が減り、相続税の負担を軽減できる。生前贈与をしたかどうかで、相続税の負担に大きな差が生まれてしまう。

 こうした不公平を避けるために存在しているのが贈与税だ。贈与税の基礎控除額は年110万円と相続税に比べてかなり低く抑えられており、累進性の勾配もきつくなっている。

 それでも“抜け穴”はあった。贈与税の基礎控除の範囲内である110万円を生前贈与することは有名だ。また資産が多く相続税率が高くなる富裕層の場合、相続税と贈与税の税率差を狙い、110万円を超えた生前贈与を行って贈与税を納めたとしても、節税につながる場合がある。そしてこの生前贈与を毎年繰り返すことで、節税効果を積み重ねることができる。

 今回の相続税と贈与税のルール改正の際に掲げられた言葉は、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」だ。資産移転の時期の選択とは、相続が発生するよりも前に贈与で財産を渡すことだ。つまり、生前贈与をしてもしなくても、相続税と贈与税を合わせた税負担は公平にしていくという意味だ。

 本特集#1『生前贈与「毎年110万円」節税が、新ルールを理解すれば「200万円以上」お得に!?相続の最適解を大検証』でも解説したように、今回の改正は、生前贈与を使った節税術を制限する内容となっている。

 一方で、贈与税には今しか使えない優遇制度が幾つか存在する。特に子育て世帯の場合には、計2500万円までの非課税枠があり、これらの贈与の特例を使いこなすことが、節税に向けた第一歩だ。

 次ページでは、贈与税のお得な特例と、利用の際の注意点や今後の見通しについてお届けする。