イラン核施設や石油施設への攻撃、イスラエルが踏み切らない理由【佐藤優】安全保障問題関係閣僚会議に出席するイスラエルのネタニヤフ首相(中央)。10月1日未明に、イスラエルに向けて約200発のミサイルを発射したイランに対して報復すると宣言した(2024年10月1日撮影) Photo:ABACA PRESS/JIJI

イスラエル情勢は日増しに緊張が強まっています。イスラエルとイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの軍事的応酬が激化する中、佐藤氏は、モサド(イスラエル諜報特務庁)の元高官と、秘匿性の高い通信アプリを使ってやりとりしました。その中身とは――。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

ヒズボラの最高幹部ナスララ師を、空爆で殺害

 イスラエル情勢は日増しに緊張が強まっています。イスラエルとレバノン南部に拠点を置くイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの軍事的応酬が加速度的に激化することになったのは、9月17日、ヒズボラの戦士たちの使うポケベル約3000台が一斉に爆発した事件以降です。翌日には、やはりヒズボラの幹部が使うトランシーバー約500台が爆発。合わせて3000人以上が死傷しました。

 戦士を負傷させるだけで生かしたまま戦線から離脱させれば、その人たちをケアするために人員とコストがかかる。殺してしまうより戦果が大きいので、諜報機関の活動としては大成功なのです。

 イスラエルは9月27日、ヒズボラの最高幹部であるナスララ師を、ベイルート近郊にあるヒズボラ本部への空爆で殺害しました。

 筆者は同じ日の午後9時50分(イスラエル時間・午後3時50分)、モサド(イスラエル諜報特務庁)の元高官と、秘匿性の高い通信アプリを使ってやりとりしました。