日本進出以前に言われた
「あなたの活動はきっと日本では受け容れられない」
ウッド でも、私たちはルーム・トゥ・リードが日本でも受け容れられると信じたのです。多くの日本人が海外に足を運んでいますし、日本の人々は世界の状況をよくご存じでしょう。そして、多くの日本企業が世界で事業を展開しているのですから。
私たちが日本での成功を信じた結果、ルーム・トゥ・リード・ジャパンの活動が早期に軌道に乗り、ぐんぐん成長していることを光栄に思っています。たくさんの日本企業がルーム・トゥ・リードの活動を支援してくださっていますし、学生もかかわってくれています。こうしたことが、ある意味ではずっとうれしい驚きの連続だったわけです。
もっとも、私は日本に出張した経験があって「人々がよく本を読む国だ」と感じていましたし、日本は世界の経済大国のひとつですから、ルーム・トゥ・リードが受け容れられたのはごく自然なことだったとも思います。
この5年間、日本はルーム・トゥ・リードにおける寄付金額で世界のトップ5に入りつづけています。これは大変ありがたいことです。私は、日本でもっとルーム・トゥ・リードの認知を高め、もっと多くの企業や個人にかかわってもらいたいと思っています。
神田 さまざまなNPOが世界で大きな影響力を持ちつつある昨今ですが、「もっとCSRを強化したい」「社会貢献したい」と考えている日本企業に対して、NPOへの支援のあり方に関するアドバイスはありますか?
ウッド 企業が社会的責任を果たすことは、多くの場合、自分たちのブランド力の強化につながるのだと気づくことが大切です。たとえば、みなさんの会社がベトナムやインド、インドネシアに進出するとしましょう。それらの国々では、みなさんの会社がどんな企業なのかが知られていません。
そこでみなさんの会社が「私たちは優れた製品やサービスを提供するだけでなく、社会的責任も果たす企業です」ということを消費者や市場に向けて発信できれば、最終的にとても良い投資になると思います。
ただお金を稼ぐためにビジネスをしているのではなく、その国の経済発展に貢献し、人道的支援をしたいという姿勢を見せれば、現地で企業のブランド力を育むことができます。「慈善事業をしよう」と考えるのではなく、「ブランド力を強化しよう」と考えるべきなのです。
そして、社会的責任を果たすという点で、いまの世の中で自分たちに何ができるかを考えるなら、教育がいちばん役に立つと思います。開発途上国の人々を怠け者であるかのように扱って「施し」をするのではなく、途上国の人材を育成するために「投資」をするのです。子どもたちの教育を支援することは、相手を尊重した活動になります。
神田 そのアドバイスはとても説得力がありますね。いまのお話で、なぜルーム・トゥ・リードが急成長できたのかが理解できました。