前回にひきつづき、ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長ジョン・ウッド氏と、経営コンサルタント神田昌典氏の対談をお送りする。
2000年に1カ国から始めたルーム・トゥ・リードの活動は、12年間でいまや10カ国にまで広がり、途上国の780万人もの子どもたちに教育の機会を届けてきた。これほどの世界的なムーブメントに成長したことをみずから「予想外だった」と振り返るウッド氏だが、その目が見据える先には、さらに“大胆不敵”な目標がある。
(文/千葉はるか 撮影/松谷康之)

本を手にした瞬間の、子どもたちの笑顔が忘れられない

【ジョン・ウッド氏×神田昌典氏対談 後編】<br />5年後に「あのときの目標は小さかった」と思える<br />自分でありたい神田昌典(かんだ・まさのり) 
経営コンサルタント・作家。日本最大級の読書会「リード・フォー・アクション」主宰。
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。
大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済部に勤務。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表として活躍後、1998年、経営コンサルタントとして独立。コンサルティング業界を革新した顧客獲得実践会(のちに「ダントツ企業実践会」、現在は休会)を創設。同会は、のべ2万人におよぶ経営者・起業家を指導する最大規模の経営者組織に発展、急成長企業の経営者、ベストセラー作家などを多数輩出した。2007年、総合誌で“日本のトップマーケター”に選出。現在、ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。公益社団法人・学び力育成協会の創設に関わったほか、現在は、公益財団法人・日本生涯教育協議会の理事を務める。
主な著書に『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』『2022――これから10年活躍できる人の条件』、翻訳書に『[新版]あなたもいままでの10倍早く本が読める』(ポール・シーリィ著)、『バブル再来』(ハリー・S・デント著)など。累計出版部数は250万部を超える。

神田昌典氏 子どものころ、ご両親からどのような教育を受けられたのですか?

ジョン・ウッド氏 私の家は、裕福とまではいきませんが、貧しいわけでもありませんでした。

 両親がいつも私に話してくれたのは、「教育だけはおざなりにするな」ということです。ひとたび教育を受ければ、誰も私からそれを奪えないからです。読書をし、勉強し、宿題をやり、良い成績をとりなさいと言われていました。

 なかでも読書は大切だと言い聞かされ、祖母や母も一緒に本を読んでくれました。おかげで私は、いまでも大の読書好きです。本なしで子どもが育つことなんて想像できませんし、そのような環境は残酷だと思います。

神田 ジョンさんは、ご自身が生まれ育ったのと同じような環境を世界中の子どもに用意したいと考えているのですね。

ウッド まさにそのとおりです。自分にはルーム・トゥ・リード、つまり「本を読む場所」がありました。自宅には本を読める部屋がありましたし、学校には図書館があり、読書をするようにと勧めてくれる人たちに囲まれていました。

 開発途上国の子どもたちに、私の子ども時代と同じ機会を届けられるというのはすばらしい体験です。カンボジアで6歳の女の子が本を手にすると、顔がぱっと明るくなるんですよ。これ以上、素敵な瞬間はありません。

神田 ルーム・トゥ・リードのプロジェクトは、支援する国や地域に固有の文化、思想、宗教をきちんと伝えるための工夫なくして成功はないように感じますが、そうした文化を反映するための工夫としてどんな取り組みをされているのかをお聞かせください。新たな国に進出する際、どのように協力体制を組んでいったのでしょうか?