“超”がつく現地化を進め、国・文化・宗教の違いを超える

【ジョン・ウッド氏×神田昌典氏対談 後編】<br />5年後に「あのときの目標は小さかった」と思える<br />自分でありたいジョン・ウッド(John Wood)
ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長。クリントン・グローバル・イニシアチブのアドバイザリー・ボードメンバー。コロラド大学で経営管理学修士、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院で経営管理学修士を取得。1999年にマイクロソフトのマーケティング部門の重役の座を捨て、ルーム・トゥ・リードを設立。アジアとアフリカの10カ国で780万人以上の子どもに教育と読み書き能力という生涯の贈り物を届けている。最新刊『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』には、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”が描かれている。
《ルーム・トゥ・リードの実績》(2013年3月現在)
学校建設 1500校以上
図書館・図書室開設1万5000カ所以上
現地語出版 874タイトル
女子教育支援 2万人以上

ウッド 私たちの活動は、すべて現地化しています。たとえばベトナムでプロジェクトを行う場合、スタッフが全員アメリカ人ということはありません。ベトナム語を話すスタッフがいるのはもちろん、現地でも人を採用しています。会話も書類の作成も現地の言葉で行われており、もちろん政府とのやりとりも現地語です。

 こうした現地化は、多くの慈善事業が軽視している部分ではないでしょうか。せっかく良い活動をしても、それが現地で理解されなければ意味がないと思います。ですから、現地のスタッフが地元の方へアプローチし、活動内容について語ることがとても重要です。

 また、ルーム・トゥ・リードは現地語の児童書の出版を行っており、「“忘れられた言語”で本を出している最大の出版社」になりました。現地語出版プログラムは、現地の方々の信頼を得るという意味でおおいに役立っていると思います。

 ネパールで現地語出版を始めたときは、現地の作家やイラストレーターを活用したこともあって政府が歓迎してくれました。私たちは、このような方法を「現地化(ローカライズ)」の進化形という意味で「超現地化(ハイパーローカライズ)」と呼んでいます。現地の方たちとの協力態勢を築くことが非常に重要なのです。

神田 ルーム・トゥ・リードの活動によって得られた社会的な効果についてお聞かせください。活動開始当初は予想しなかった反響はありましたか?

ウッド いちばん予想外だったのは、ルーム・トゥ・リードが世界的なムーブメントになったことです。まさにいま、私が日本でこのような活動ができているという事実そのものですね。私の講演会に500人もの方たちが集まってくださること、そしてたった一晩のイベントで1億円近い寄付金を集める光栄にあずかれたことを、大変うれしく思います。

 実は、私は多くの人から「日本ではルーム・トゥ・リードは受け容れられないでしょう。日本とアメリカでは社会貢献活動の方法がだいぶ違うし、だれもあなたのことを知らないのだから」と言われていたんです。