5年後に「あのときの目標は小さかった」と思える自分でありたい
神田 では、最後にもう一つうかがわせてください。
ご著書を読むと、活動をスタートされてからおよそ10年間で非常に多くのことを成し遂げられたのだということがわかります。ルーム・トゥ・リードはさらに次のステップに進む時期にあるのではないかと感じますが、今後10年の課題はどこにあるとお考えですか?また、ルーム・トゥ・リードが描く未来について、ぜひお聞かせください。
ウッド 私たちの支援を必要としている国はまだまだたくさんありますから、より多くの国でルーム・トゥ・リードの活動をスタートさせたいですね。たとえば、現在はルーム・トゥ・リードの11カ国目の支援先としてインドネシアをリサーチしています。
「2015年までに1000万人の子どもたちに教育の機会を届ける」というのが当面の目標ですが、その次は「2020年までに2000万人の子どもたちに教育の機会を届ける」という目標を立てるかもしれませんし、将来的な可能性には限界がないと思っています。
ルーム・トゥ・リードが活動を開始してから12年間、プロジェクトの進捗は順調でした。しかし私たちの活動は日進月歩で進化しているので、おそらく未来からいまの時点を振り返れば「まだこれだけしかできていないのか」と思うでしょう。もしも私が5年前に神田さんと対談していたら、「私たちが建てる図書館の目標数は5000だ」と話していたはずです。
ところが、いまはこうして、すでに1万5000カ所の図書館・図書室を設置したとのだとお話しすることができます。5年前には大きな目標だと感じていた数字が、いまでは小さく見えるのです。5年後には「1万5000カ所の図書館」という数字を小さいと感じるような自分たちでありたいですね。
ルーム・トゥ・リードがうまく前進できず、問題に対応できないとすれば、それは5歳や6歳の子どもたちが学校に通えず、本を読むこともできないということを意味します。世界が貴重なチャンスを逃してしまうということにほかならないのです。ですから、ルーム・トゥ・リードは、ずっと成長しつづけていきたいと思っています。
神田 貴重なお話をありがとうございました。とてもすばらしい対談でした。
【新刊のご紹介】
あのロングセラーに待望の続編が登場!
ジョン・ウッド著『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』
四六判・上製・328頁ISBN:978-4-478-02289-4
ネパールの山奥、たまたま訪れた地元の小学校で“本のない図書館”に衝撃を受けたジョン・ウッドが、マイクロソフトの経営幹部職を辞して2000年に立ち上げたNPO「ルーム・トゥ・リード」。設立から10年以上が経ち、いまや数々の賞を受賞する世界的なNPOとなった。
ジョンの2作目となる本書は、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”を伝える内容。本作の読みどころのひとつは、スターバックスの出店スピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館・図書室を設置する“超成長組織”のリーダーとしての、ジョンの苦悩と試行錯誤だ。世界的に注目される社会起業家とはいえ、ジョンもひとりの人間。信じた人物に裏切られ、思わぬハプニングに泣かされるなかで、リーダーとしての自分の至らなさにいらだつことも一度や二度ではなかった。それでも、「2015年までに1000万人の子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標に向かって突き進むジョンの姿は、私たちにとってもおおいに刺激になる。
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イントロダクション 10年間で1万カ所の図書館
第1章 大胆な目標は大胆な人を引き寄せる
第2章 1キログラムの金塊
第3章 人生の宝くじ
第4章 すべてはバフンダンダから始まった
第5章 チャレンジ・グラント・モデル──自分たちで助け合う手助けをする
第6章 バルマー主義で一流のチームをつくる
第7章 ツナミから1年
第8章 レンジローバーはいらない――経費削減戦争
第9章 ネパールのドクター・スース
第10章 ベイビー・フィッシュ、学校へ行く――現地語出版プログラム
第11章 南アフリカの悪夢
第12章 教育が社会を再建する
第13章 CEOを卒業する
第14章 ゴミ箱のなかの希望
第15章 「この図書館の本を全部読みます」
第16章 小さな肩に家族の夢をのせて
第17章 ミスターX
第18章 カンボジアに向けて──リテラシー・ワン
第19章 恐怖の足音
第20章 世界最長の資金集めメーター
第21章 公約違反
第22章 ボート・トゥ・リード
第23章 「本が読めなければ、学校は拷問だ」
第24章 テクノロジーがつなぐ想い
第25章 ミスター・ポエットとミス・ライブラリー