2012年7月に刊行された『世界を変える偉大なNPOの条件』が静かなブームとなっている。アメリカでも強い存在感を持つ12のNPO組織が、社会を変えるために、具体的に何を、どのように実践しているのかを分析した本書は、日本の関係団体に対して強いインパクトを与えている。そこで、本書の訳者でもある服部優子さんに、本書の魅力を具体的に語ってもらった。
『世界を変える偉大なNPOの条件』の原著 Forces for Good は、英エコノミスト誌が2007年のビジネス書ベスト10冊に選んだ評価の高い経営書です。私はこれまで、書籍ではなく企業間で交わされる書類群を扱う産業翻訳を生業としてきましたが、原著の存在を知ったとき、この本をぜひとも日本に紹介したいと強く意識しました。それは、英国の有力経済誌が評価したからではなく、日本のNPOと世界のノンプロフィット・セクターとの間にある大きな隔たりが、日本の不幸の要因の一つであると感じていたからです。本書の内容が普及すれば、日本にも偉大なNPOや社会的企業の誕生が加速され、新しい価値観が広まるのではないか――この本がその風穴をあけるのに役立つのではないかと直感したのです。
社会を変えるための価値観は、
政府や民間セクターにも有用
本書の内容はタイトルが示す通り、社会に大きな影響力をもたらすNPOを作るうえで運営の指針となるばかりでなく、教科書のような役割を果たすものです。しかし、ここではあえて、NPO関係者だけでなく、民間企業の方や政治家、公務員の方も含めた多方面の方々に向けて、違った視点からお話させていただきたいと思います。
政府、自治体、民間企業で活躍されている志ある多くの方々にも、社会を変えようとする優れた組織が果たしている大きな役割を知っていただき、みなさん自身が、それぞれの立場でかれらの価値観を共有して、日本社会を変革していく力になっていただければ、日本はもっと生きやすい幸福な国に生まれ変われると考えています。