「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
新規事業への先行投資
不測の事態に備えられる現預金を準備できるようになったら、第二の利益の活用法として新規事業への先行投資を検討します。
これは毛利重就が検地で増収を図り、増えた石高を新規事業ともいえる「撫育方」に投資したのと同じです。
既存事業ではなく、将来の変化に対応できる新規事業に活用します。
既存事業の利益で
借入金を返済
もっとも、十分に利益を貯めてから新規事業に活用するのは、現実にはなかなか難しいケースもありますし、貯まるのを待っていたら新規事業が成長するタイミングを逃してしまうこともあります。
そこで、自己資本と金融機関からの借入金を組み合わせることで新規事業を立ち上げ、しばらくは現在ある事業の利益を借り入れの返済にあてます。
新規事業の立ち上げ当初は通常、赤字のため、借入金の返済はできないでしょう。既存事業の利益で借入金を返済しつつ、新規事業を育てるのです。
既存事業の利益を
信用力の裏づけに
新規事業が順調に成長し、利益を出せるようになれば、その利益から借り入れの返済にあてることができます。
利益が貯まらないから新規事業を立ち上げられない、ではなく、現在ある事業の利益を信用力の裏づけとして、借入金を活用することも検討します。
実際、私がコンサルティングしている年商30億円規模の会社では、現在ある高収益事業の利益を信用力の裏づけに、銀行からの借入金で新規事業を立ち上げ、工場を新設。3年目にして黒字転換を果たし、5年目から事業単体で借入金を返済できるようになりました。
「社員の待遇改善」への投資
この事業は借入金の返済後も順調に成長しており、会社全体の収益力を高めたのです。利益の活用法の第三としては、社員の待遇改善への投資です。
これは重就の事例にはありませんが、現代では考慮しないといけない活用法です。会社は株主のものとされていますが、実際には商品・サービスを顧客に提供し、収益をあげている社員が幸せになることも、リーダーの使命といってよいでしょう。
不測の事態に備えて内部留保を蓄積しても、実際に働いている社員の待遇が改善されないと、他社への人材流出が進み、継続的に収益を生み出せなくなるかもしれません。
今後ますます重要な課題
労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は、2022年平均で6902万人と、前年に比べ5万人の減少となっているなか、とくに若い働き手の人口が減っており、待遇改善により優秀な人材をひきつけることが、競争力のある商品・サービスを提供する源泉になります。
経営者だけではなく、部門長にとっても、優秀な人材をひきつけることが、今後ますます重要になってきます。
利益が増加したときは、不測の事態に備えた原資としつつ、それを超過する分については、毛利重就のように将来の成長につなげるような事業や人材への先行投資を検討するべきです。
1. 将来の不測の事態に備える
2. 新規事業に先行投資する
3. 社員の待遇改善に活用する
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。