今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』がPIVOTでも配信され話題となっている。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

【簡単なのに9割知らない】お金にまつわる不幸な性質・ワースト1Photo: Adobe Stock

お金の「不幸な性質」とは?

一番たちが悪いのは抽象的な報酬だ。

私の大好きなテレビの人気コメディドラマ『そりゃないぜ!? フレイジャー』のエピソードに、主人公のフレイジャーと弟のナイルズが高級スパに入り、次から次へと上のVIPレベルがあることに気づく面白いシーンがある。

彼らがついに最高レベルのエリアに入ったと思って満足していると、さらに上のレベルに通じるプラチナのドアを発見。それまでの経験の価値がたちまち下がってしまう。

「ここは、本物の天国に行けない人のための天国だ」
とナイルズは叫ぶ。

抽象的な報酬の王様は?

お金だ。
お金はただの数字であり、数字は無限だからだ。
お金はどれだけあっても十分とは思えない。

映画『スター・ウォーズ』で、ルーク・スカイウォーカーはハン・ソロに、レイア姫を救出する見返りとして、
「想像できないほどの報酬がもらえるぞ」
と約束する。

ハンは
「俺はとてつもない額を想像できるぞ」
と答える。

お金を中心にして回る社会のやっかいな点は、誰もが「もっと多く」を想像できることだ。

お金には、常に「もっと」多くをほしくなるということではなく、持てば持つほど価値が下がるという不幸な性質がある。

これは経済学で「限界効用逓減の法則」と呼ばれている。

銀行口座に100ドルしかなければ、1ドル増えることに意味があり、1000ドルあれば人生が変わるかもしれない。

しかし、銀行口座に1000万ドルあれば、1000ドル増えても誤差の範囲でしかない。

幸福度と所得水準に関する研究

幸福度と所得水準に関する研究もこれを裏づけている。

以前の研究とは違い、最新研究(2023年時点)では、所得が高いほど幸福度が高くなることがわかっている。

しかし、幸福度は所得の増加と同様のペースで上がるわけではなく、所得が高くなると相関関係がなくなる人もいる。

たとえば、収入が6万ドルから12万ドルに倍増した場合(金額的には6万ドルのアップ)の幸福度の増加は、収入が12万ドルから24万ドルに倍増した場合(金額的には12万ドルのアップ)と同じである。

収入が24万ドルの人が、再びこれと同じ幸福度の増加を得るには、収入が48万ドルに倍増(金額的には24万ドルのアップ)しなければならない。

これは、まさに限界効用逓減の法則だ。
何かを多く持てば持つほど、そこから得られる単位あたりの利益は少なくなる。つまり、稼げば稼ぐほど損するのだ。

お金はあくまでもペンのインクであり、あなたの人生の物語そのものではない。

そのインクを使って新しい章を書いたり、展開を華やかなものにしたりすることはできる。
つまり、その物語をどう描くかは、あなた次第なのだ。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)