今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。
【メンタルが強くなる】ストイシズム「4つの美徳」とは?
本書で私は、こう書いた。
ストイシズム(ストア派哲学)では、勇気、知恵、正義、自制という4つの美徳が重んじられている。
では、「4つの美徳」を実践するにはどうすればいいのだろう?
常に衝動に抗うのではなく、自然かつ直観的に自制心が働く人格を築くにはどうすればいいのだろうか?
まずは、衝動的に判断を下さず、一呼吸置くことを意識してみよう。
「朝食を何にするか」「今日ジムに行くかどうか」「同僚から送られてきたトゲのあるチャットメッセージにどう返事を書くか」「1日の終わりにようやく手に入れた自由時間に何をするか」など、私たちは24時間の中で、それなりに重要な決断を100回程度は下しているはずだ。
人はこうした決断を、本能や感情に任せ、あまり深く考えずに反射的に行う。それが一番手っ取り早い方法だからだ。
そして、後から振り返ったとき、状況のせいにしがちだ。
「朝食を抜いたのは、遅刻しそうだったから」
「辛辣な返信を書いたのは同僚のチャットメッセージが理不尽だったから」
というふうに。
ここで、ストイシズムの知恵の美徳を思い出そう。
マルクス・アウレリウスと
フランクルの言葉
そう、自分がコントロールできることが何かを知るのだ。
その境界線を引くのは簡単だ。
マルクス・アウレリウス・アントニヌスは、
「外界で起こる出来事はコントロールできないが、自分の心はコントロールできる」
と明言している。
心理学者のヴィクトール・フランクル(1905~1997)は、
「刺激と反応の間には空間がある。私たちはその空間の中で、その刺激に対してどんな反応をするかを選択できる。この反応の中に私たちの成長と自由がある」
と述べている。
ストイシズムへの第一歩
私たちは環境をコントロールできない。
だが、それにどう反応するかはコントロールできるのだ。
1日100回下す決断のうちほんの数回でも、フランクルが言う刺激と反応の間にある空間を見つけ、自分の価値観や計画を思い出せれば、次の機会により良い判断を下す力になる。
1日に1回でも、
「私はこれをコントロールしている。この反応は自分の選択だ」
と心の中でつぶやき、その瞬間に感じた衝動に任せた行動ではなく、正しいと信じる考えに基づく行動を選ぶことが、ストイシズムの道への一歩になる。
これは、決して怒りを感じてはいけないという意味ではない。
私もしょっちゅう怒っている。
ガッカリしたり、苛立ったり、恥ずかしい気持ちになったりしてはいけないというのではない。
それらは、挫折や失敗に対する人間の正常な反応である。
大切なのは、自分の怒りや恐れ、欲に目を向け、それらに振り回されないようにすること。
人格と行動は好循環をつくり出せる。
まずはいくつかの行動から始め、人格を鍛えていこう。
結果として、多くの場面で適切な行動ができるようになっていくはずだ。
おそるべき「習慣の力」であなたも変わる
この好循環を加速するのが、習慣の力だ。
健康的な習慣は、反射的な脳に手綱をかけ、私たちを望ましい反応に向かわせる。
過去数十年、科学や社会は習慣に大きな関心を寄せてきた。
このテーマで書かれた多くの書籍が人気を呼び、「習慣の力」の重要性が広く知られるようになった。
人間の行動の多くが、習慣的なものであることがわかっている。
そして、それは基本的に良いことだ。判断を下すたびに毎回考え込んでいたら、朝食を食べ終えることすらできなくなるだろう。
重要なのは、刺激に対しての自動的、反射的な反応と、ゆっくり時間をかけて判断できる場合に下せる適切な反応が一致するよう、習慣を訓練することだ。
習慣的に望ましい反応ができるようになると、重要な判断や反応、難しい判断や反応をコントロールするための認知的・感情的エネルギーは増えていく。
意図的に習慣を形成する方法はいくつかある。
チャールズ・デュヒッグは著書『習慣の力』(早川書房)の中で、「きっかけ(キュー)─ルーチン─報酬」というサイクルで習慣をつくる方法について説明している。
また、全世界で約2000万部も売れた『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』(パンローリング)の中で著者のジェームズ・クリアーは「きっかけ─欲求─反応─報酬」というサイクルを提唱している。
他にも様々な方法がある。ストイシズムと仏教がそうであるように、どれも道は違っても、目指す場所は同じである。
(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)