ビジネスパーソンにとって仕事は、試合会場のピッチやグラウンド、あるいはアリーナや土俵のはずだ。毎日が試合で、毎日が練習、これがビジネスである。もっと人として、「心技体」を大事にしたいものだ。

欧米ではスポーツ心理学が
ビジネスに応用されている。

 また、「スポーツ心理学」なる言葉はあるが、「ビジネス心理学」という言葉はあまり聞かない。そんな学部があるのかも知らない。わたしの知人で、クレアモント大学院大学のMBAコースでメンタルをビジネスパーソンに教えているジェレミー・ハンター氏のような方は極めて少ないのではないだろうか?スポーツには心の状態が必須で、それを学問として研究しているのだ。

 さらに、その心理学が広く社会やビジネス界にも応用されていく実学が欧米にはある。何年も前になるが、わたしがこのようなことに興味を持ちはじめたころ、アメリカの応用スポーツ心理学学会なるものへ参加したことがある。

 スポーツ心理学の先生方が、スポーツもビジネスも関係なくメンタルトレーニングをされていたのが衝撃的だったのを今でも覚えている。週末はコロラドスプリングスでメンタルトレーニングをオリンピアンにされている先生が、ウィークデーはウォールストリートでビジネスパーソンのメンタルトレーニングをされているというような話をされていて驚いた。

 NBAでこんなチームワークトレーニングをしてうまくいったという事例をメーカーの企業でも行っている先生の事例発表や、ニューヨークのジュリアード音楽院でメンタルトレーニングをしながら、オリンピアンや企業のメンタルトレーニングをされているようなスポーツ心理学の先生が大勢いたのだ。

 日本ではスポーツは体育だから、スポーツよりもビジネスが常時上位にあり、スポーツからビジネスが学んでいくものがあるなどとは考えられていない。しかし、ビジネスは人の営みだとわかっていれば、スポーツも同じだし、そこから学べるものもあるはずだと考えることができるはずだ。日本でいえば、ビジネスパーソンが宮本武蔵の『五輪書』から学んだり、日本の武士道精神を学び続けているのと同じかもしれない。